台風19号では多摩川が氾濫するなど、人口密集地域が水没の危機にさらされた。気候変動の影響で災害が激甚化し、「首都水没」への包囲網は確実に狭まりつつある。そんななか、東京都葛飾区が打ち出したのが、浸水を「受け流す」市街地構想だ。
2015年の関東・東北豪雨では鬼怒川の堤防が決壊し、16年には3つの台風が北海道に上陸。17年の九州北部豪雨では線状降水帯が猛威を振るい、18年の西日本豪雨は死者・行方不明者232人を数える「平成最悪」の水災害となった。
そして19年の台風19号。西日本豪雨を上回る約2万5000haが浸水した。多摩川が氾濫し、荒川の水位が急上昇。「首都水没」がいよいよ現実味を帯びてきた〔写真1〕。
「気候変動などの影響が治水対策の進捗を上回る、新たなフェーズに突入した可能性がある」。国土交通省の検討会は10月18日、「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」と題する提言を発表し、治水対策の見直しを強く迫った〔図1〕。
現状 | 今後の予測 | |
気温 |
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降雨 |
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台風 |
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提言では国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が14年にまとめた第5次評価報告書を踏まえ、40年ごろまでに平均気温が2℃ほど上がるとすると、100年に1回の降雨量が全国平均で現在の1.1倍になるとした。河川の流量は約1.2倍、洪水の発生頻度は実に約2倍に上昇する〔図2〕。
降雨量 | 流量 | 洪水発生頻度 | |
4℃上昇(RCP8.5) | 1.3倍 | 約1.4倍 | 約4倍 |
2℃上昇(RCP2.6) | 1.1倍 | 約1.2倍 | 約2倍 |