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今回はデジタル変革を実行するための組織や人材について解説する。価値創造サイクルには様々なフェーズがあり、求められる組織や人材が異なる。IT部門とユーザー部門の役割を包含して再配置するような組織改革が求められる。

 この連載は企業に価値をもたらすデジタル変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)を組織としてどのように実践すべきかを、事例を交えつつ説明している。デジタル変革はAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)をはじめとするデジタル技術を活用して、新たな事業やサービスの創出、顧客満足度の向上などを狙う取り組みを指す。

 デジタル変革を実行するためには「価値創造サイクル」を繰り返す必要がある。価値創造サイクルは、試行錯誤によって新たな製品・サービスや業務プロセスを生み出す「価値創発サイクル」、生み出した製品・サービスや業務プロセスをビジネスの中で活用しながら改良し続ける「価値増幅サイクル」、そして2つのサイクルを連結する「ブリッジプロセス」で構成する。

 これまでは価値創発サイクル、価値増幅サイクル、ブリッジプロセスのそれぞれについて、その実践方法を解説してきた。

 今回は、これらのデジタル変革のプロセスを実行する組織と人材について説明する。デジタル変革を実行しようとする場合、「デジタルイノベーションラボ」のような名称を持つ専門組織を設置する企業が多いのではないだろうか。

 しかし専門組織を作っただけではデジタルイノベーションの実行は不十分だ。これまでユーザー部門、IT部門としていた役割を再定義するような抜本的な組織再編が必要になる。

デジタル変革の組織

 ではデジタル変革を実行するためにはどのような組織が望ましいのだろうか。まずはデジタル変革の実行体制を見ていこう。

 デジタル変革を実行する組織は、どのような組織能力(組織IQ)が求められるのかを考えよう。デジタル変革はITを活用することからも、まずは情報サービス産業で好業績を生み出す組織と同様の組織能力が求められる。

  • 外部情報認識:外部環境の変化の予兆を捉える。外部のシーズを探知する
  • 内部知識発信:エコシステムを構成する者の間で、組織などの境界線なく情報や知識を共有する
  • 効果的な意思決定機構:フラットな経営組織を作り、変革チームへ権限を移譲する
  • 組織フォーカス:ミッションが明確で自律的な変革チームを編成する
  • 絶えざる革新:価値創造サイクルを駆動し続ける

 こうした組織能力を持ったデジタル変革の実行組織は、価値創造サイクルの3つのプロセスのそれぞれに合わせた部門で構成する。

  • 価値創発を担う部門:新たな製品・サービス、業務プロセス、数理モデルの試作品を制作するプロジェクトで構成するサービス開発部門
  • ブリッジプロセスを担う部門:試作品を実用品のサービス部品にして、事業部門に導入する。この部門は、戦略設計図と個々のサービス部品の整合性を確保し、サービス部品の運営全体を統括するサービスガバナンスを担う
  • 価値増幅サイクルを担う部門:サービス部品を利用して、新たな業務プロセスや顧客サービスを組み立て、変革を実行する事業部門

 デジタル変革の実行組織は、従来のユーザー部門とIT部門の機能を包含し再構成した部門となる。IT部門はITサービスの提供責任者として、ユーザー部門である事業部門と責任を分担していた。しかしデジタル変革においては、サービス部品を開発して提供する人材と、サービス部品を利用して変革を実行する人材は、密接に連携して活動する。

図 デジタル変革の実行体制
図 デジタル変革の実行体制
ユーザー部門とIT部門を包含した機能が求められる
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