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 2021年に合計9回のシステム障害を起こしたみずほ銀行。その8回目、9月30日の事案は財務省による行政処分の対象になった。金融庁がシステム障害の検査を進める中で、外国為替及び外国貿易法(外為法)に違反する行為があると分かったためだ。この詳細は11月26日に初めて明らかになったので、まずはこれを説明しよう。

表 2021年にみずほ銀行が起こしたシステム障害
わすか1年で9回のシステム障害
表 2021年にみずほ銀行が起こしたシステム障害
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コンプライアンス責任者が判断誤る

 みずほ銀行では9月30日、外為送金取引を支援する「統合決済管理システム(ISCS)」で、月末の処理集中に伴いシステム負荷が高まったことから、送金の電文処理に遅延が発生した。顧客から依頼された外為送金は午後3時の「カットオフタイム」までに完了させる必要があるが、一部の外為送金がそれに間に合わなくなる恐れが生じた。

図 2021年9月30日に発生したシステム障害の概要
図 2021年9月30日に発生したシステム障害の概要
送信遅延を恐れて外為法に違反する送金を実行
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 そこでみずほ銀行は午後2時30分、「非常対策プロジェクトチーム(PT)」の会議を開催。カットオフタイムに間に合わせるために、アンチ・マネー・ロンダリング(AML)システムによるチェックを省略する方針を決断し、実際に349件の外為送金がAMLシステムによるチェックを経ずに実行された。外為法第17条は銀行に対して、為替取引に際して、規制対象取引でないことの確認を義務づけている。この外為送金が外為法に違反したとして、財務省はみずほ銀行に対して是正措置命令を発令した。

 非常対策PTの会議に出席していたCCO(最高コンプライアンス責任者)がAMLシステムによるチェックを省略しても法令に沿った対応ができると主張。それを受けて非常対策PTの共同PT長である企画グループ長とCIO(最高情報責任者)が対応を決定した。

 みずほフィナンシャルグループ(FG)とみずほ銀行は11月26日に、金融庁や財務省の処分を受けて4人の役員が引責辞任すると発表した。その4人は、みずほFGの坂井辰史社長、みずほ銀行の藤原弘治頭取、CIOの石井哲みずほFG執行役兼みずほ銀行副頭取、CCOの高田政臣みずほFG執行役兼みずほ銀行常務執行役員だ。システム障害に関連してCCOが引責辞任するのはこうした事情による。

 財務省はみずほ銀行において「役職員の外為法令の知識不足」「危機対応時における関係部署間のコミュニケーション不足」「平時の確認義務の履行態勢に係る問題並びに関係部署間のコミュニケーション及び連携の不足」「外為法令遵守のためのシステム管理態勢の脆弱性」があったと指摘する。

 CCOやCIOが出席する会議で外為法に違反する決断をしたことが、「役職員の知識不足」や「関係部署間のコミュニケーション不足」に該当する。誤った決断を下した背景に「平時からの連携不足」があった。加えてAMLシステムを省略して外為取引を実行できる状態であったことが「システム管理態勢の脆弱性」に該当する。

 みずほ銀行を9カ月近く検査した金融庁は、繰り返されるシステム障害の「直接的な原因」とその「背景」、それらの事象を生み出した「真因」に分けて分析している。