全2465文字
PR

各事業会社が進めるDXに対して、グループ全体でどう相乗効果を生み出すか。ベイシアグループはDXの戦略会社を立ち上げ、その舵取りを担わせる。グループ共通のIT企業であるベイシア流通技術研究所の改革にも着手した。

 2021年1月、新会社のベイシアグループ総研がひっそりと立ち上がった。コンサルティングファーム出身者やCDO(最高デジタル責任者)経験者などの中途採用者のほか、各事業会社のビジネスに精通する優秀な社員を集めた頭脳派集団といえる。

 同社の役割は、ビジネスとデジタル両軸でのグループの底上げだ。カインズの土屋裕雅会長がベイシアグループの舵(かじ)取りを担うようになり、各社の独立性を重んじつつも緩やかに連携を進めている。そこでベイシアグループ総研は約1年間にわたり、組織づくりや戦略策定を進めてきた。中でも、ベイシアグループ共通のIT企業であるベイシア流通技術研究所(以下、流技研)と連携して、グループ横断のDXを推進している。

図 ベイシアグループ総研とベイシア流通技術研究所の役割
図 ベイシアグループ総研とベイシア流通技術研究所の役割
機能会社がDXを支援
[画像のクリックで拡大表示]
グループ共通のIT組織であるベイシア流通技術研究所(写真提供:ベイシア)
グループ共通のIT組織であるベイシア流通技術研究所(写真提供:ベイシア)
[画像のクリックで拡大表示]

 このDX戦略を取り仕切るのがベイシアグループ総研の樋口正也執行役員ベイシアグループIT統括本部長。実質的なベイシアグループのCDO兼CIO(最高情報責任者)に相当し、流技研の改革も担う。

 樋口氏は日本IBMでSCM(サプライチェーンマネジメント)やEC(電子商取引)、デジタルマーケティングなど多様な部門の事業責任者を務めた経歴を持つITのプロだ。面識のあった土屋会長から「ベイシアグループ全体のIT・デジタル戦略の舵取りを任せたい」と声をかけられ、2021年7月にベイシアグループに参画した。

「事業会社に自由にやってもらう」

 樋口氏は自身のミッションを大きく2つ挙げる。1つはグループ全体のIT・DX戦略の最適化だ。

 ベイシアグループにはグループ共通の情報システム部門のような役割を果たす流技研がある。グループ各社の人事や会計などバックオフィス業務の支援システムを提供したり、店舗のネットワークやパソコンの配備などインフラ面を支援したりする。

 従来は「何でもかんでも流技研が(グループ各社のシステムの)面倒を見すぎていた。スピードが求められるデジタル・IT戦略では、ある程度事業会社に自由にやってもらった方がいい」と樋口氏は明かす。

 そこで樋口氏は流技研と事業会社の役割を再定義した。アプリやEC、デジタルマーケティングなど、顧客接点であり各社の個性が出る競争領域のシステムは事業会社に任せる。競争領域ではないバックオフィス系は共通化してコストメリットを出したり、統合管理してセキュリティーを担保したりするために流技研が担う。ただし規模が大きくなくIT人材を抱えられないグループ企業は、従来通り流技研がカバーする。カインズやベイシアなどの事業会社が「攻め」のDX戦略を進め、グループ横断のIT戦略であるいわば「守り」の部分を流技研が担うというわけだ。