人手不足対策や業務効率化、サービス・製品の付加価値向上のため、各社は自社業務に合わせた独自AIの開発を進めている。SRSホールディングスやオルビスなど5社の事例を紹介する。
SRSホールディングス
ロボットアームを制御 食器洗い場の司令塔AI
「和食さと」などの外食チェーンを運営するSRSホールディングスは2021年春にも開店させる予定の「天丼・天ぷら本舗 さん天」の新規店舗に、AI搭載のロボット食洗システムを導入する。食器洗いの作業を自動化し、人手不足と人件費高騰に対応する。
同システムは食器を認識するための3次元カメラとAI、2本のロボットアーム、食洗機から成る。店員が食器内の残飯を捨てたうえで特定のエリアに置くと、AIが3次元カメラの映像から「どんぶり」「平皿」「おわん」など食器の種類やロボットアームが持つべき箇所を推定する。ロボットアームは食器を吸着して持ち、予洗い場、食洗機に順次移して、最後は収納エリアまで運ぶ。
自動食洗システムは2018年からコネクテッドロボティクスと共同開発してきた。複数のAIアルゴリズムを組み合わせたのが特徴だ。
ロボットアームで持つべき食器の箇所の特定は「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」、食器の種類の判別はCNNの一手法である「YOLO」を適用。さらに、光の反射で食器の見た目が変わると認識しにくくなるため、反射やノイズを加えた食器の画像を別のAIで生成し追加学習させた。画像生成AIのアルゴリズムには「GAN(敵対的生成ネットワーク)」を用いた。
開発過程では食器認識の精度が悪かったり、ロボットアームが急にストップしたりするなどの課題に直面し試行錯誤した。「ようやく現場で使えるレベルに達した。洗浄スピードは店員に比べて劣るが、現場で使うには十分だ」と開発を担当する神保素未来オペレーション創造開発部長は言う。
重里政彦社長は「新店への導入から半年で成果を見極めたい」と意気込む。新店で使いながらシステムやオペレーションを改善し、今後順次全店に展開していく計画だ。