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国際連合の「持続可能な開発目標(SDGs)」がビジネスを変え始めた。社会課題の解決を目指すスタートアップが多額の資金を調達する一方、環境問題などから目を背ける企業は、市場からの退場を迫られ始めている。

 約4000万人、全人口の3分の2に相当する人々が電力の届かない地域に暮らす、東アフリカのタンザニア。夜の明かりは灯油ランプ頼みのため、煙による室内の汚れや子供の呼吸器疾患が課題になっている。こうした状況をITによって変えようと奔走する日本のスタートアップがある。WASSHA(ワッシャ)だ。

 同社がタンザニアで展開するのは、太陽光によって充電したLEDランタンを一般消費者にレンタルする事業だ。ユーザーは「キオスク」と呼ばれる現地の小売店で日本円にして1日当たりおよそ25円を支払うと、充電済みのLEDランタンを借りられる。ランタンは携帯電話などが充電できる機能も備える。WASSHAの秋田智司CEO(最高経営責任者)は「夜の明かりと携帯電話の充電という、現地における電力の2大ニーズを手軽に満たすサービスだ」と説明する。

図 WASSHAのビジネスモデル
図 WASSHAのビジネスモデル
「キオスク」を拠点にサービス網を構築(写真提供:丸紅)
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 WASSHAは同サービスを提供するために、タンザニア国内においてキオスク1800店からなるサービス網を構築した。契約した店には30個のLEDランタンやランタンを充電する太陽光発電装置などを無償で貸し出す。ランタンはそのままではロックがかかっていて使用できない。キオスクのオーナーがその日に貸し出す予定のランタンの「ロック解除料」を、現地で普及しているモバイル送金サービスで支払うと、ランタンのロックを解除するコードが送られてくる。

 同地のキオスクの平均月商は日本円にして1万円ほど。WASSHAのランタンレンタル事業を始めると1.5~2倍に増えるという。

 2020年はウガンダやモザンビークなど周辺国にも進出し、2022年までに合計1万店を目指す。キオスクをハブにした物流事業の試行も2019年9月から始めた。キオスクをハブに生産者から農作物を買い付けて、都市部の露天商などの需要とマッチングして出荷する。タンザニアは農業が主産業だが物流網が未発達で、農家は市況情報を知る手段を持たない。店舗網を活用して農家の収入の底上げを狙う。

日本の大企業が熱視線

 WASSHAがアフリカに構築する店舗網には日本の大企業も熱い視線を注ぐ。2019年11月にはダイキン工業がWASSHAの販売店網を活用して、ダイキンのエアコンを小規模店舗や一般家庭にサブスクリプション方式で提供する事業を検証すると発表した。翌12月にはヤマハ発動機がWASSHAの店舗網への製品配送にヤマハ発動機の二輪車を活用すると発表した。

 ダイキンとヤマハ発動機は2019年11月にWASSHAによる約10億円の資金調達にも参加した。WASSHAの累計資金調達額は約24億円に達する。

 WASSHAの快進撃が象徴するのは、アフリカにおける再生可能エネルギーの普及や貧困の解消が、採算度外視の慈善事業ではなく有望なビジネスになったという事実だ。

 米国では15年以上前からスタンフォード大学などの有力大学が、社会的な課題を事業によって解決する「社会的起業」に学生が挑むのを支援していた。日本でも社会的起業に挑むスタートアップが増えている。

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