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発展途上国に安全な水を、AIで食料問題を解決、給与の即時払いで貧困解消―。SDGsという事業の種を大木に育てようと、日本のスタートアップが奮闘している。世界に挑む各社の取り組みを追った。

 SDGsの目標「安全な水とトイレを世界中に」の達成に貢献しそうなスタートアップが、WOTA(ウォータ)だ。同社は2019年11月に小型の水循環装置「WOTA BOX」の出荷を始めた。シャワーなどの排水をWOTA BOXに通すときれいな水になり、繰り返し使えるようになる。

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図 WOTA BOXを使うシャワーを台風19号の被災地に設置した様子
図 WOTA BOXを使うシャワーを台風19号の被災地に設置した様子
AIを使って水処理を効率よく(写真提供:WOTA)
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 使った水は98%が再利用できる。100人がシャワーを浴びても100リットルしか水を消費しない。通常なら100リットルの水は、2人がシャワーを使うだけでなくなってしまう。

 WOTA BOXは不純物を取り除く複数のフィルターと水質を計測するセンサー、水を送り出すポンプやバルブなどで構成する。水質に応じて水を流す圧力やフィルターの種類を自動制御することで浄化効率を上げている。

 鍵を握るのがAI(人工知能)だ。フィルターを通る前と後の水質を比較して、最も浄化効率が高まる制御法を導いたり、装置の異常を検知したりする。

 WOTAは製品化に先立ち、自然災害の被災者や屋外イベントの参加者にWOTA BOXを使って入浴機会を提供してきた。2019年10月に台風19号で被災した長野市内には14台のWOTA BOXとシャワーキットを設置した。約1カ月の間に延べ4000回以上のシャワーの利用があった。