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 在宅介護を受けている高齢者の数は、厚労省が公表している統計から推定すると、介護施設で暮らす高齢者の2倍以上の約365万人にのぼる。状態の悪化(重度化)をできるだけ遅らせることができれば、高齢者は住み慣れた自分の家での生活を維持できる。そのためAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)を駆使して在宅介護の支援に乗り出す企業が増えてきた。

AIが歩き方を分析、改善に生かす

 自宅で生活する高齢者の重度化につながりやすいのが、転倒による骨折だ。寝たきりになった原因の上位を占める。そこでAI企業のエクサウィザーズは、スマートフォンやタブレットで歩行の様子を動画で撮影すると高齢者の転倒リスクを推定できるアプリ「CareWiz トルト」を開発した。

歩行の様子を撮影して解析している様子(写真提供:エクサウィザーズ)
歩行の様子を撮影して解析している様子(写真提供:エクサウィザーズ)
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 AIが動画の中の骨格の位置を抽出して高齢者の動きを分析することで、歩行時の速度やリズム、頭部のふらつきなどを算出する。転倒リスクのほか、歩き方の分析結果や歩行に必要な足の筋力をつけるための運動情報などを結果として示す。

 例えば歩行中の速度が遅かったりリズムが悪かったりすると、歩行するための筋力が低下している可能性がある。また、頭部のふらつきなどが大きいとバランスを崩して転倒しやすい。こうしたデータを基に転倒リスクを算出するという。「小きざみな歩き方になっています。余裕をもって歩けるように歩幅を意識してみましょう」などのコメントも表示し、歩き方の改善に生かしてもらう。

 エクサウィザーズは2021年5月、福祉用具のレンタルや販売を通して在宅介護を支援するヤマシタ(静岡県島田市)と合弁会社のエクサホームケアを設立した。ヤマシタの社員が高齢者とその家族に歩行補助具を提案する際に、CareWiz トルトを利用する。歩行補助具による歩行の速度や頭部のふらつきなどの改善効果を示し、高齢者本人にも納得して歩行補助具を利用してもらう。

 「『自分はまだ歩行補助具は必要ない』と考えている高齢者に、補助具を利用する意義を客観的に伝えられる」とエクサホームケアの取締役も務めるエクサウィザーズの石野悟史執行役員は話す。老化して歩行時のふらつきが増えるとバランスを崩しやすくなる。転倒すれば骨折するなどして入院につながるため早期の対応が必要だが、家族など周囲は危ないと思っていても、本人が認めないケースもあるという。

 IoTやAIなどを活用した在宅介護の支援には大手企業も乗り出している。パナソニックはそうした企業の1社だ。「在宅介護の高齢者の重度化を防止することで、施設への入居を遅らせられる。高齢者本人のQOL(Quality of Life)の向上につながると考えている」とパナソニックでコーポレート戦略・技術部門事業開発室スマートエイジングプロジェクトの主幹を務める木田祐子氏は話す。