全4164文字
PR

国内ECの市場規模はこの10年で2.5倍と急成長を遂げた。一方で顧客に商品を届ける肝心の物流網はデータの流れが滞り非効率さが目立つ。物流の目詰まりを起こす「デジタル化の壁」を突破する挑戦者が、相次ぎ登場している。

 長年解消されない日本の非効率な物流網。根源にあるのが「デジタル化の壁」だ。荷主、倉庫会社、そして配送会社。日本の物流網を構成する各企業のシステムは事実上サイロ化された状態にある。それぞれの電子化が遅れるばかりかデータの標準化や連携も遅々として進まない。デジタル化を寸断する壁が各所に立ちはだかるため、今なお人手が多く介在し、現場の負担が減らないばかりか誤出荷をなくすのも難しくなる。

図 物流業界が直面している課題
図 物流業界が直面している課題
物流網の各所にデジタル化の壁
[画像のクリックで拡大表示]

 この壁を突破すべく一手を講じた物流大手がある。

 東京地下鉄(東京メトロ)東西線の南砂町駅から数分歩くと、東京ドーム3.6個分に相当する延べ床面積約17万平方メートルの巨大施設が姿を現す。佐川急便を傘下に持つ物流大手SGホールディングスが、2020年1月に開設した総合物流拠点「X(エックス)フロンティア」だ。その一角で2020年4月、EC(電子商取引)事業者に向けた新たな物流支援サービスが始まった。

物流をサブスク、小口でも気軽に

 ECで販売している商品の入庫から検品、保管、商品の発送まで一連の物流業務を、SGHD傘下の佐川グローバルロジスティクスが一括して請け負う「シームレスECプラットフォーム」だ。商品保管スペースやマテリアルハンドリングなど物流設備やシステム、作業員のリソースを、複数のEC事業者で共同利用する仕組みである。

図 佐川グローバルロジスティクスの「シームレスECプラットフォーム」
図 佐川グローバルロジスティクスの「シームレスECプラットフォーム」
複数のネット通販会社で保管・配送機能を共有
[画像のクリックで拡大表示]

 ECを手掛ける企業にとり、1社で倉庫や作業員などを手配する負担は頭の痛い問題だ。セールの際などに臨時で保管スペースや人員を増やすといった手間も大きい。外部の事業者に物流業務を委託する場合でも、多くの事業者が大量輸送を前提としているため荷主に一定の出荷量が求められる。特に荷量が少ないEC事業者を倉庫会社や物流会社は敬遠しがちだ。

 そこで佐川グローバルロジはシームレスECプラットフォームを、小口荷物や少量の荷物でも気軽に使えるサービスに仕立てた。具体的には継続課金型の「サブスクリプションサービス」の仕組みを取り入れた。倉庫保管料や入出荷の作業料金は、個数や大きさによる従量制を採用。契約期間は1カ月単位だ。最低利用期間も設けていない。物流拠点の新規立ち上げにかかる高額な初期投資を不要にしたほか、小ロットやスポット的な配送依頼が可能な点も売りにする。中小企業の利用を想定していたが「大手からも繁忙期だけ、特定の商品だけなど引き合いが来ている」と、佐川グローバルロジスティクス東京支店営業課の三木綾乃チーフは話す。

 柔軟で手軽な物流サービスを実現するために同社が力を入れるのが、デジタル技術の活用だ。異なるEC事業者の商品を同じシステム、同じオペレーションで取り扱えるようにする。属人的な仕事を減らすとともに生産性を向上させ、コスト効率を高めるのが主な狙いだ。