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日本の物流網を圧迫するのが宅配における不在再配達率の高さだ。データとITを活用し、柔軟に荷物を受け取れる仕組みづくりが加速している。課題解決へ物流大手は発想を転換、利便性を損ねず顧客にも一定の歩み寄りを求める。

 高品質な配送サービスを維持するため、配達員には高い運転技術と体力、コミュニケーション能力が求められるとされる日本の宅配業界。働き手が不足している昨今は採用や育成が追いついていない。

 2017年春にはヤマト運輸が総量規制に動くなど「宅配危機」が社会問題になった。以来、クローズアップされてきたのが再配達率の高さだ。

 配達員はたとえ不在と分かっている時間帯でも、一度は荷物を届けに行き、持ち帰らなければならない。国交省によると2020年10月の宅配便の再配達率は約11.4%と、前年同期に比べて3.6ポイント減少した。新型コロナ禍に伴い在宅時間が増加傾向にあるためだが、依然として1割前後を行き来しており、抜本的に改善したとは言えない。繰り返される配達作業に人手不足も相まって現場がますます疲弊し、退職者が増えていく。背景には国内ECの急成長に伴う需要増を見越した配送体制の構築が追いつかず、労働環境の改善も先延ばしにしてきたツケが回った面もある。

生活圏で柔軟に受け取り

 顧客に荷物を届ける最後の経路、ラスト・ワンマイルを圧迫する不在再配達問題。品質維持のため配達現場に無理を強いる施策は限界に達しつつある。

 消費者の使い勝手や満足度を維持しながらも配達効率を高める。物流大手は抜本的に発想を変え始めた。鍵を握っているのは、消費者側にも自然な「歩み寄り」を促す取り組みだ。

 荷物を何が何でも自宅に届けるのではなく、受け取り場所として「マチナカ(街中)」という別の選択肢を提示したのがヤマト。2020年11月、ネットで注文した商品を実店舗で受け取れる、いわゆる「クリック&コレクト」と呼ばれるサービスを開始した。

図 ヤマト運輸が2020年11月に始めたクリック&コレクトサービス
図 ヤマト運輸が2020年11月に始めたクリック&コレクトサービス
全国1000店舗でEC商品を受け取れる(写真提供:ヤマト運輸)
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 通勤途中にある店舗を商品配達先に指定できるサービスで、利用者が店舗を柔軟に選択できるのが特徴である。「再配達の削減だけでなく受け取りの利便性を高めるのが新サービスの狙いだ。様々な店舗と組み、日々の生活動線上でストレスなく荷物を受け取れる環境を作っていく」。ヤマト運輸の斉藤泰裕EC事業部事業戦略/商品開発担当部長はこう意気込む。

 ヤマトの新サービスでは、スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンターなど多種多様な店舗から、消費者が自由に選んで荷物を受け取れるのがメリットだ。自宅外で荷物を受け取れるサービスはこれまでにも存在したものの、その場所は宅配会社の営業所やコンビニエンスストア、駅など公共エリアに設置したロッカーなどに限られていた。

 実際の荷物の受け渡し方はこうだ。まず商品の購入者はヤマト運輸から届くメールで、商品の受け取りを希望する店舗を選択。次いで商品がEC事業者から店舗に到着した後、今度は納品を通知するメールとともに2次元バーコードが購入者に届く。購入者は通勤の途中や外出時に店舗を訪れ、カウンターでこの2次元バーコードを提示することで商品を受け取れる。

 店舗側では、店員がヤマト運輸から貸し出される専用端末を2次元バーコードの読み取りに使う。この端末には商品の保管場所などの情報を管理する機能も備わっており、納品から保管、受け渡しまで1台で管理できる。将来的にはこれらの機能をアプリとして提供し、店舗のスマートフォンを使えるようにすることも検討する。