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インターネットの仕組みを基に物流網を抜本的に作り直す──。そんな将来構想の実現へ世界の企業や研究機関が動き始めている。倉庫やトラックなどの資源をオープンに共有し、持続可能な物流網構築を目指す。

 「この1~2年で明らかに風向きが変わった。多くの荷主企業や物流企業の関心が高まり、実際に『取り組んでみよう』という会社も出てきた」。物流やサプライチェーンマネジメントに詳しい野村総合研究所(NRI)の藤野直明主席研究員がこう語るのは、世界で研究開発が進む未来の物流構想「フィジカルインターネット」についてだ。

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図 世界的に研究が進む次世代物流構想「フィジカルインターネット」
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図 世界的に研究が進む次世代物流構想「フィジカルインターネット」
インターネットの仕組みを現実の物流網に

 フィジカルインターネット──。文字通り、インターネットで情報を運ぶ仕組みを物流に取り入れる全く新しい構想である。まだ聞き慣れないが、日米欧の物流大手や学術機関がこぞって研究や実証に力を注いでいる。

特定の中核設備を無くす

 日本での旗振り役はヤマトホールディングス。傘下のヤマトグループ総合研究所は2019年9月、米国におけるフィジカルインターネットの第一人者、ブノア・モントルイユ教授が所属する米ジョージア工科大学と情報の交換や発信などで協力すると発表した。2020年8月には欧州の物流業界で著名なエリック・バロー教授が所属するパリ国立高等鉱業学校とも同様の覚書を締結した。2020年5月にはSGホールディングスが決算説明会でフィジカルインターネットに取り組むと表明し、業界を驚かせた。

 なぜ今、フィジカルインターネットが注目を集めているのか。それは、現代の物流網の限界を突破する切り札として期待が高まっているからだ。

 従来の物流インフラは基本的に「ハブ・アンド・スポーク」の考え方に基づいてモノを運んでいる。大都市圏に中心拠点を設け、そこにいったん荷物を集めた上で各地の拠点ごとに仕分けて送るというもので、「大量の荷物を一度にまとめて運ぶ」という、主に法人顧客のニーズに適した仕組みだ。

 だが小口荷物を頻繁に運ぶ必要が高まった現代はデメリットも目立つ。物流会社は通常、倉庫やトラックなどを自社で抱えている。荷量が増えれば膨大な投資をして配送能力を高める必要があるが、普段はその能力いっぱいにまで使われることがないため設備やネットワークに無駄が生じてしまう。

 一方のフィジカルインターネットはメッシュ型ネットワークを構成する。本家インターネットが通信設備や回線などを利用者間で共有することで情報を効率よくやり取りするのにならい、倉庫やトラックなど物理的な物流設備を様々な事業者や利用者が共有する。荷物に取り付けたセンサーやAI(人工知能)などを活用しながら、その時々で最適なルートを通じ、最適な設備を使ってモノを運んでいく。

 どこか特定の物流設備に荷物を集約するのではない。ライバル企業同士が手を組んで物流資源をオープン化し、全体最適の考え方で高効率かつ持続可能性のある物流網を築くのが狙いだ。