災害の時の避難誘導、遭難者の捜索、不審者追跡―。非常時や緊急時にドローンを使いこなす動きが始まっている。新宿区、御殿場消防署、セコムの取り組みを見てみよう。
「新宿駅方面は人が殺到しており危険です。西側へ避難してください」。そう呼びかけるのは上空に浮かぶドローンだ。東京・西新宿の新宿中央公園で2019年12月、ドローンを使って被災者を誘導するという一風変わった避難訓練があった。東京都新宿区危機管理課と、近隣に拠点を構える損害保険ジャパン日本興亜、理経、工学院大学などが共同で実施した。
防災目的でドローンを活用する取り組みは2016年度に始めた。5回目の今回は同公園を含む西新宿地区内の2カ所でドローンを飛ばし、街の様子を撮影して新宿区役所内の災害対策本部に送った。災害対策本部はその映像を参考に、地区内の被災者の最適な誘導先を探り、ドローンに搭載したスピーカーを通じてアナウンスする。
ドローンは中国DJIなどの機体を使った。災害時に携帯電話の公衆回線が使えなくなることを想定し、近隣の工学院大学キャンパスに常設されている4.9ギガヘルツ帯の無線通信装置を映像伝送に用いた。地元の企業や大学の設備とノウハウを行政の災害対策に組み込み、災害時にスムーズに官民連携できるよう備えている。
富士山上空で遭難者捜索
ドローンは年間20万人以上の登山者が訪れる富士山でも活用されつつある。2つの登山道を管轄する御殿場消防署が、遭難者捜索の目的で2019年11月に1カ月試験導入した。