カインズやベイシア、ワークマンなどから成るベイシアグループの実質的なトップを務める。カインズのSPA(製造小売業)化を断行するなど、業界きっての改革派としての顔も持つ。2018年に「IT小売業宣言」をぶち上げ、大胆なデジタル組織づくりを推進してきた。
(聞き手=浅川 直輝、鈴木 慶太 2021年11月4日にインタビューを実施)
2021年2月期にグループの売上高が1兆円の大台を超えました。ここまで成長できた理由をどう見ていますか。
当社グループの強みは「商売人スピリッツ」を持っている従業員が多いことです。来店した目の前の顧客に、懇切丁寧に接しようとする姿勢は何よりも成長の原動力です。そして負けん気の強い社員が多い。
私は当社グループの経営を「ハリネズミ経営」と呼んでいます。各業界で他社を寄せ付けないほど「とがった」企業の集合体にするという意味です。各社に経営の自由度を持たせ、グループとしてシナジーを出すよりも互いが切磋琢磨(せっさたくま)する関係性を求めています。
そういった意味で、グループ内競合も辞しません。一見すると非効率ですがそこが1つの成長の原動力になっています。
2007年にはカインズ社長としてプライベートブランド(PB)の開発に舵(かじ)を切る「SPA宣言」を行い、2018年にはITを駆使する小売業に変貌する「IT小売業宣言」をしました。
宣言シリーズとしてはその2つが有名ですね(笑)。SPA宣言は、メーカーから仕入れるナショナルブランド(NB)を売っているだけでは、いずれ安売り競争に巻き込まれるという危機感があり、そちら(SPA)に向かいました。