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事業のバランスを重視

 事業ポートフォリオ全体を見て、量子コンピューターのように将来を見据えて投資をしながら、伸びる事業は伸ばし、既存事業はキープする。この事業ポートフォリオを崩してはいけません。米本社の経営会議でも議論していますが、事業ポートフォリオのバランスは適切な方向に向かっています。

(写真:村田 和聡)
(写真:村田 和聡)
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でもDXのパートナーに新興企業を選び、IBMにはコスト削減の案件だけを任せる顧客企業が目立ちます。

 逆にDXなどの新しい案件をIBMに任せると言ってくださる新規のお客様もたくさんありますよ。実際、DXやデータ活用に携わる人材は全然足りません。日本IBMグループで2019年は新入社員を800人、中途を900人ほど採用しました。

 DXの分野には既存のITサービス企業やメーカーだけでなく、数多くのスタートアップが参入しているのは事実です。さらに顧客企業が自らDXのサービスを手掛けるケースも増えている。IBMが昔のように汎用機だけで全部まかないますなんてできるわけがない。いろいろなプレーヤーが参画するのは、全くもって正常だと思います。

理系人材を経営トップに据える大手企業が増えています。SE出身の山口さんが社長になったのも偶然ではないのでは。

 私が逆に聞きたいくらいですね(笑)。ただ世界の経営者と話をしている中では、ITの動向をベースに議論しない限り物事が進まない事態が増えていると感じます。

 米本社は日本の顧客や市場を理解した人が前面に立つべきだと考えています。米国人でも日本人でも構いませんが、市場のことを一番理解しているのはその国の人であるのは間違いない。

元社長の椎名武雄氏の名言「Sell Japan in IBM」と「Sell IBM in Japan」の両方に取り組むと。

 そうですね。それが日本IBMのトップの一番の責任だと思うし、結構楽しいですよ。東大との量子コンピューターの共同研究を進めれば、世界中の国にも貢献できるわけです。それは楽しいですよね。ただし経営者なので、結果を出さなければいけませんが。

(写真提供:米IBM(量子コンピューター))
(写真提供:米IBM(量子コンピューター))
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