業種を問わずさまざまな企業が参画を模索するメタバース事業に挑む。強みのIP(知的財産)を利用し、小さくとも熱気あふれる「IPメタバース」で巨大ITと差異化する。デジタル技術を駆使して、権利保護とビジネス活動が両立した新たな経済圏の確立を目指す。
(聞き手=浅川 直輝、野々村 洸)
「IPメタバース戦略」とはどのようなものでしょうか。
バンダイナムコグループはキャラクターやコンテンツなどの主要なIP(知的財産)を軸にしたビジネス戦略を打ち出しています。その中でもデジタル事業を手掛けるバンダイナムコエンターテインメントはIPの強みを生かした複数のメタバースの開発を進めています。
例えば「ガンダム」や「鉄拳」などといったコンテンツごとに、それぞれのキャラクターや世界観を楽しんだりファン同士が交流したりできるメタバースを生み出すわけです。
IPごとのメタバースをつくる狙いは。
イメージとして「音楽ライブ」を例に挙げてみます。私は音楽が好きで、よくライブ鑑賞にいくのですが、ライブ空間はアーティストのファンが埋め尽くしていて、その空気感、密度が素晴らしいんですよね。
IPメタバースも同様で、コンテンツのファンが中心になって空間を埋め尽くせば、楽しい時間をユーザー同士が分かち合えるのではないかと考えているんです。IPメタバース内も、映像関連、プラモデル、eスポーツなどのジャンルで区分けします。彼らは共通のファンですから、きっとそのジャンルで自慢し合ったり、魅力を伝え合ったりしてくれるように思うんですよ。
こうした戦略をいつごろから構想していたのですか。
メタバースという言葉が今ほど有名になる前から、構想を進めていました。ただ、リアルかデジタルかを問わず、ずっとファン同士が集まれる場所は必要だと考えていました。リアル空間に関しては、バンダイナムコライブクリエイティブ(現バンダイナムコミュージックライブ)という企業を立ち上げ、ライブ事業も進めてきたわけです。
そして現在、デジタル空間に重きをおいたファン空間の構築も、技術的に夢物語ではなくなりました。実際、新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前から、私は社員たちに「デジタル空間上でファンコミュニティーをつくろうよ」と呼びかけ、少しずつビジネスとして進めていたものが、今のIPメタバースの基礎になっています。