全3046文字

新型コロナウイルス感染拡大を受け、いち早くサンリオピューロランドを休園する決断を下した。かつてない経営危機も変革の契機と捉え、動員数至上主義からの脱却を宣言。デジタルの活用や人材育成を加速し、新たなテーマパーク像の構築を目指す。

(聞き手=玉置 亮太、矢口 竜太郎/日本経済新聞)

小巻 亜矢(こまき・あや)氏
小巻 亜矢(こまき・あや)氏
1983年、サンリオ入社。結婚退社や出産などを経てサンリオ関連会社へ復帰。2015年にサンリオエンターテイメント取締役に就任。2016年にサンリオピューロランド館長となる。2019年6月より現職。子宮頸(けい)がん予防啓発活動「ハロースマイル」委員長。SDGsプラットフォーム代表理事。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」大賞。(写真:村田 和聡)
[画像のクリックで拡大表示]

新型コロナウイルスの影響が広がり始めた2020年2月、いち早く休館を決めました。率直な感想を。

 つい5年前まで経営面では大変苦しい状況にありましたが、2018年3月期には黒字転換を果たし、コロナの問題が出るまでは順調に推移していました。ようやく業績が伸びてきたタイミングでしたので、休館は経営的には大変痛手です。

 しかし日本中が同じ痛みを共有していますので悲観ばかりしていられません。他の経営メンバーに対しても、取り戻せるときが来たら取り戻していこうと話しています。

再開に向けて休館中にどのような準備を進めてきましたか。

 感染防止体制の検討や施設の保守点検にはじまり、補修や清掃、館内の消毒を徹底してきました。新たなサービスやコンテンツの企画開発にも取り組んでいます。

 従業員の安全確保や業務継続については、非常事態宣言解除までは自宅待機としてリモート会議やオンライン研修を実施してきました。在宅勤務が可能な職種に関してはテレワークで業務を進め、出勤する必要がある従業員に関しては施設入り口での検温やマスク着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンスの確保を実施しています。

 対外的にはソーシャルメディアやライブ配信サービスを活用し、施設の様子やミュージカルなどのコンテンツを定期的にオンラインで配信してきました。従業員にもオンライン配信に対する顧客の反応を見てもらい、心理的モチベーションを保つ狙いもあります。