日本版ユニコーンの筆頭にあげられるAI(人工知能)技術者集団を率いる。AI人材育成や企業との新規事業開発など、研究開発で培ったノウハウを基に領域を広げる。新型コロナ禍の2年間で失われた、ベンチャー企業としての熱気や情熱を取り戻すと意気込む。
(聞き手=浅川 直輝、玉置 亮太)
石油元売り大手のENEOSとの共同出資会社(JV)を通じて、深層学習を使って化学物質を探索するためのクラウドサービス「Matlantis(マトランティス)」の提供を2021年7月に始めました。どのような経緯でJV設立にいたったのでしょうか。
ENEOSとは当初、科学技術分野の素材探索に関して共同研究を始めました。その中で核となる技術の開発を進め、有用性を見いだして今回の共同事業につながりました。
当社は技術の研究・開発は得意と自負していますが、化学分野の素材探索を独力で事業にして広く展開するのは難しい。営業力だったり、化学分野の専門知識だったりとか。そこでENEOSと組み、互いに補完関係を築いて、事業の成長を目指そうと考えたのです。
当社は以前から企業と協業してきましたが、それまではどちらかというと研究所のような役割を果たしてきました。今後はパートナーの企業と一緒に事業を育てていく方向へシフトしたいと考えていたんです。そこで今回、JVをつくって事業を拡大する形態を選びました。
明確に収益の責任を負うJVをつくったという意味でも、一段フェーズが進んだ協業と言えますね。
そうですね。そこは2020年から2021年にかけての大きな1つのシフトだと考えています。
当社はいろいろな事業が集まっているので、外から見ると何をやっている会社か分かりにくくなっているかもしれません。パートナー企業と共同事業体をつくって事業自体を大きくしていけば、対外的にも当社の取り組む事業内容が分かりやすくなります。私たちにとっても自分たちの事業を育てるのは非常に面白く、モチベーションの向上につながります。