「我が国全体をつくり替えるくらいのつもりで取り組んでほしい」――。2021年9月1日、菅義偉首相(当時)はデジタル庁発足式で期待をこう示した。それから1年がたち、デジタル庁はその期待に応えられたのか。
(聞き手=浅川 直輝、長倉 克枝)
デジタル庁の発足から1年、同庁のこれまでの成果について、どう評価していますか。
首相に就任した直後に「1年でデジタル庁をつくる」と発言しました。行政のデジタル化の遅れがひどく、さらに地方自治体と中央省庁のシステムがバラバラ、中央省庁でも役所ごとにバラバラでした。
さらに新型コロナウイルス禍においてもコロナ患者の発生届をファクスで送るという状況でした。これは逆に考えれば行政のデジタル化を根本から立て直す絶好の機会であり、だから「1年間でやる」と言ったのです。
ときには腕力で進めていく
結果的に、1年を経てデジタル庁はうまく回り始めていると思っています。民間人材の採用も含めて霞が関の働き方改革の先頭を行くなかで、ようやく回り始めてきたのかなと。
マイナンバーカードは今申請率が50%にきて、交付枚数が約6000万枚になりました。地方自治体で市区町村によってバラバラのシステムを、20業務について標準化しクラウドに乗せる方向に進み始めています。
新型コロナワクチン接種でも(国民の接種記録を管理する)「ワクチン接種記録システム(VRS)」を使い、スマートフォンで接種証明書を発行できるようになりました。(対面や書面を強いる)「アナログ規制」の一括見直しも思い切ってやったと思います。
こうした成果を上げながら、組織としてようやく回り始めてきているのかなと思っています。
「スピード感」「縦割り打破」など、既存の仕組みを改革する意欲について、今のデジタル庁をどのように評価しますか。
デジタル大臣が河野太郎さんになりました。(前任の)牧島(かれん)さんも能力の高い人でしたが、デジタル大臣の仕事には「力勝負」が求められる部分もかなりあり、その意味でかなりご苦労されたと思っています。
ときには腕力で進めていくことも大事です。例えば(力勝負という点で)総務省所管だった地方公共団体情報システム機構(J-LIS)をデジタル庁の所管とするのも調整が大変でした。平時であればなかなかできなかったと思います。