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巨大IT企業の商慣行からITサービス業の多重下請けまで、調査や違法行為の審査を強化する。規制が萎縮を生まないよう、取引慣行の改善へ民間の自主性に期待している点を強調。違法行為への警告に加え、公正競争を通じたイノベーションの促進も提言する。

(聞き手=浅川 直輝、玉置 亮太、玄 忠雄)

小林 渉(こばやし・わたる)氏
小林 渉(こばやし・わたる)氏
1986年3月に東京都立大学法学部卒後、公正取引委員会に入職。審査部の審査専門官や外務省出向、経済産業省出向などを経て、2009年に公取委の経済取引局企業結合課長。2018年7月に消費者庁審議官、2021年に経済取引局長を経て、2022年7月より現職。(写真:的野 弘路)
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公正取引委員会の事務方トップとして、日本のデジタル産業にとってより良い競争のあり方をどう考えていますか。

 公取委が取り組む競争政策は、あくまでも日本の消費者が利益を享受できる観点に立ちます。「日本のデジタル産業」がもし日本の産業界を指すならば、公取委は国内産業の育成という観点は持っていません。国内外の企業を問わず、公正かつ自由な競争がいかんなく発揮できる市場環境を作ることが公取委の役割です。

 結果として企業の勝ち負けや寡占が生じることはあります。ただし市場環境がゆがまないようにすることで、新規参入の機会が生まれ、競争を通じて新たなイノベーションの発生も期待できるでしょう。

 我々は健全な競争こそがイノベーションを生み、日々の取引を向上させるという理念を持って、デジタル市場にも取り組んでいます。

(写真:的野 弘路)
(写真:的野 弘路)
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