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デジタルなくして生活なし

生保の営業スタイルも時代に合わせて変える必要がありそうですね。

 ええ。最近社内で「ノーデジタル、ノーライフ」とよく話しているんです。デジタルがなければこれからの生活は成り立たないという意味です。

 リアルのチャネルを中心としながらも、ノーデジタル、ノーライフの世界で事業を続けるには、デジタルを積極的に取り込んで活用する必要があります。さもないとお客様のニーズや生活様式と事業が合わなくなってしまう。こういう一種の問題意識、課題認識からデジタルに対する積極的な取り組み姿勢を示すべきだと考え、デジタル5カ年計画を打ち出しました。

(写真:村田 和聡)
(写真:村田 和聡)
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計画策定には清水社長自身も直接かかわったのですか。

 はい、新しい試みですから、ボトムアップでは議論が進まないのではないかと思っていました。そこでデジタル5カ年計画を推進する委員会を設けて、私が委員長に就きました。2019年4月に発足したばかりですが、私が委員長を務めることで私の考え方を直接メンバーに伝えることができましたし、具体的な進捗を(自ら現場で手を動かす)ハンズオン形式で見ることができました。

生保にとってデジタル活用とは、社長が担うべき重要な仕事であると。

 私はそう思っています。営業職員によるリアルチャネルを今後も事業の中心にしながらもデジタルを効果的に取り込み、デジタルだけの領域でもリーダーになる。さらにリアルとデジタルを融合した領域でも首位でありたいのです。

 そのためには経営トップ自身が議論に参加するべきです。デジタルの取り組み方によって企業の競争力が大きく変わる可能性がある今、経営トップによる直接のコミットメントが必要だと考えています。

(写真提供:日本生命保険)
(写真提供:日本生命保険)
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基幹システムは事業そのもの

デジタル化の具体策としてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入に早くから取り組んできました。

 5カ年計画のなかで3つの注力領域を挙げています。既存業務の効率化、既存市場への新しいアプローチ、そして新しいビジネスモデルの創出です。RPAは第1の領域における具体策の1つです。

 もともとは保険の事務からスタートしたのですが、既にさまざまな業務に入っています。資産運用のほか、支社や営業現場の事務にもRPAを取り込んでいます。削減した業務時間をお客様対応や新規の業務などの仕事に振り向けています。

第2の領域に挙げた既存市場への新しいアプローチとは。

 データビジネスの推進が一例です。これまで事業活動を通じていろいろなデータを蓄積してきましたが、まったくといっていいほど活用できていません。お客様への営業活動や商品開発のアプローチ、そしてお客様との接点作りなどに、データを有効活用したい。

 3つめの新しいビジネスモデルの創出については、疾病予防を考えています。例えば糖尿病の重症化を防ぐための、生保ならではのプログラムを開発したいと考えています。これまでの保険事業はお客様の身に何か起きたときに保険金や給付金をお支払いしてきました。ただ、健康な状態が長く続けばそれに越したことはないわけです。

日本生命は基幹システムを約7年ごとに刷新しています。老朽システムの刷新問題、いわゆる「2025年の崖」に悩む企業が多いなか、定期的に数百億円を投じる理由は。

 生命保険業にとって基幹系システムは事業そのものだからです。数十年におよぶ契約を結んで内容を厳格に管理し、必要に応じて中身を見直す。非常に長期にわたる契約管理が事業そのものです。保険金や給付金は正確かつ迅速に支払わなければなりません。医療情報など、非常に高度なプライバシー情報も管理しています。

 したがって事業を支えるITそのものが堅牢でなければいけません。高いサービス品質や情報セキュリティーを保つ必要もあります。生命保険業の基幹系システムは定期的な刷新を通じて最新技術を取り込み、これら3つの特徴を備えていなければなりません。

定期的な基幹系刷新を企業としての競争力強化につなげているわけですか。

 そう意識しています。当然、非常にお金が掛かります。新たな開発や定期的な運用保守に相応の投資が必要な大型システムを抱えているのが生命保険業です。基幹系システムは事業に必要不可欠ですから、しかるべきお金をかけて常に最良のものにしておく必要があります。

(写真:村田 和聡)
(写真:村田 和聡)
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