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ある「事件」をきっかけに投資ファンドから電波事業会社の社長に転身した。ポケットベルの電波に新たな防災インフラの可能性を見いだしたからだ。金融業界で30年以上にわたって培った調査能力を武器に新事業に挑む。

 かつては女子高生にも広く利用されたポケットベル。それが今、住民へ避難指示などの防災情報を確実に伝えるインフラに生まれ変わりつつある。ポケベルの電波(280メガヘルツ帯の電波)を用いた防災無線を普及させた仕掛け人が、東京テレメッセージ社長の清野英俊だ。独自の「280MHzデジタル同報無線システム」を約40の地方自治体に提供している。20万台以上の専用端末が運用中だ。

(写真:陶山 勉)
(写真:陶山 勉)
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 自治体では60メガヘルツの電波による防災行政無線が普及しているが、課題があるという。法律で出力が10ワット以下に規制され、電波が届きにくい。屋外スピーカーでの警報も集中豪雨の音に邪魔され住民に聞こえないことがある。住民に戸別受信機を配る手もあるが、電波の波長は5メートル。電波が住宅内部へ入る窓の枠よりも大きく室内の受信機に届きづらい。

 「ポケベル波なら課題を解決できる」と清野は熱を込めて語る。出力は250ワット弱と強く、波長も約1メートルで窓から入りやすい。そこで東京テレメッセージはポケベル波を受信する防災ラジオを開発した。送信局から文字データを乗せた電波を受信すると、音声に変換して住民に伝える仕組みだ。

 実は、清野は社長就任前の約30年間、銀行や外資系投資ファンドなどを渡り歩いた金融のプロだ。銀行ではデリバティブ(金融派生商品)など新規事業を相次ぎ立ち上げて成果を出した。外資系ファンド時代には、持ち前の調査能力や訴訟対応能力を駆使して数々の債権回収を成功させてきた。