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低賃金や言葉の壁など日本における外国人就労は様々な問題を抱えている。友人の強制送還をきっかけに、ビザ申請支援会社を立ち上げた若き経営者は、新たな在留資格制度がスタートした機をとらえ、問題解決に真っ向から挑む。

(写真:陶山 勉)
(写真:陶山 勉)
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 2015年設立のベンチャー企業one visa(ワンビザ)。設立以来、外国人の在留資格申請や雇用企業の管理業務を支援するサービスを提供してきた。既に約500社の導入実績を持つ。

 2018年からは来日前の日本語教育からビザ取得、来日後の生活までを一気通貫で支援する事業に乗り出した。第1弾としてカンボジアに日本語の教育センターを2018年8月に設立した。

 ビザの情報を基に外国人が金融サービスなどを利用しやすくする取り組みも進めている。セブン銀行やクレディセゾンと協業し、来日とほぼ同時に銀行口座を開設したり、クレジットカードを発行したりできるようにした。

 転機となったのは2019年4月に施行した改正出入国管理法だ。外国人の単純労働に門戸を開く新たな在留資格「特定技能」が設立された。

 従来の国際貢献を目的とした技能実習制度は、単純労働の裏口として利用されることも多く、違法な長時間労働や低賃金などの問題も抱えていた。「特定技能はこれを克服し、企業と外国人の新たな雇用関係を始められる可能性を秘める」。CEO(最高経営責任者)の岡村アルベルトは期待を込める。

 特定技能は介護や外食産業、農業など14業種を対象とし、政府は5年間で最大34万5000人の受け入れを見込む。特定技能で外国人を採用しようとする企業は事前のオリエンテーションや住民登録、定期的な面談や報告などが求められる。これを支援する仕組みは必要不可欠だ。

 技能実習制度でも、企業は実習生の受け入れ体制を整える必要があり、毎月3万円前後の費用が発生するという。「このコストが外国人の雇用を妨げる要因になる」と岡村は指摘する。

 one visaのサービスは、こうした管理業務をITによって効率化する。例えばビザ申請サービスは、オンライン上で母国語による必要事項の入力や必要書類の自動選定機能などを備えている。2019年3月には富士ゼロックスシステムサービスと協業を発表し、地方自治体にも働きかけて住民票や納税証明書といった書類のフォーマット共通化にも取り組んでいる。