AWL(アウル)は小売店向けに「AIカメラ」を提供するスタートアップ企業だ。社長を務める北出宗治は、札幌で結んだ縁から起業に関わることになった。サービス開始直後に襲った想定外の危機を乗り切り、世界を目指す。
ドラッグストアやスーパー、コンビニエンスストアなど向けに防犯カメラの映像をAI(人工知能)で分析するサービスを手掛けるAWL。北出宗治が2016年6月、北海道大学大学院教授の川村秀憲と立ち上げたスタートアップ企業だ。提供するサービスは「AIカメラ」と呼ばれ、防犯カメラが撮影した顧客の行動をAIが分析し、販売促進や品ぞろえなどに役立てる。
北出がAIカメラの事業化を目指したきっかけは、コンサルタント時代にさかのぼる。顧客企業からAIの活用法について何度も相談を受けたのを機に、北出自身もAIの可能性に強い関心を抱くようになった。同じく顧客の1社で北海道を中心にドラッグストアチェーンを展開するサッポロドラッグストア(現サツドラホールディングス)社長の富山浩樹にその話をしたところ、川村を紹介された。
川村はAIの社会実装を推進するための会社設立を考えていた。2015年に川村と会うと「すっかり意気投合した」(北出)。それが縁でAWLの前身であるエーアイ・トウキョウ・ラボを北出と川村を含む5人で創業した。
サツドラとの縁も続いた。AIカメラを中心とする小売業向けのAIソリューションを提供するため、AWLはサツドラの子会社となり、北出自身がサツドラの店舗で店員として2週間働いてみた。サツドラの経営陣やスタッフと店舗運営の課題などについて議論を重ね、AIカメラの潜在市場は大きいと判断。2017年10月、北大構内に札幌オフィスを開設し、実証実験を重ねた。
2018年には、既設の防犯カメラを活用して現場でAI分析ができるエッジ型ソリューションの着想に至ったという。さらに2019年9月、AIカメラを広く販売する目的でAWLはサツドラHDの連結対象から外れた。