コーセーがデジタルマーケティングに注力している。10年以上をかけてIT部門を「頼れる存在」に変えたCIOが、化粧品会社のデジタルトランスフォーメーション(DX)に挑む。
当社が今最も注力しているのがデジタルマーケティングだ。2018年に専門の事業部を立ち上げた。化粧品のブランド事業部でEC(電子商取引)をけん引してきた人材や、単身で海外市場を開拓してきた人材など個性的で優秀なメンバーが集まっている。
IT部門は当初からこの事業部とタッグを組み、必要となるIT基盤を整えてきた。デジタルマーケティングでは当社の全てのブランドがデジタルを駆使して顧客とつながり、ニーズを先取りした商品の開発や、個々の顧客に対する最適な商品提案に結び付けることを目指している。全社的な業務プロセスの見直しや散在する顧客データの統合などが欠かせない。
その一環として顧客の属性や購買履歴などをブランド横断で集約するデータ統合基盤を構築した。リアル店舗やECを利用する顧客の動向を分析し、ECやSNSを利用する顧客をどうやってリアル店舗にも誘導するかといった施策に活用する。
2019年12月にはコンセプトストア「Maison KOSÉ」を東京・銀座に開設した。研究所とパナソニックが共同開発した肌の診断機器など、最新のデジタル技術が体験できる。同じ名前を冠したWebサイトも立ち上げ、リアルとネットで顧客の声を把握しつつPoC(概念実証)やテストマーケティングにチャレンジしていく。
こうした顧客接点での取り組みはデジタルマーケティング事業部が主導しており、IT部門は裏方だ。ただIT部門がデータ連係やインフラ整備などで支援したことにより、スピード感を持って展開できたと考えている。
当社はデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を使ってはいないが、デジタルマーケティングのように新技術を取り込んで顧客価値を向上させるのが当社のDXだという認識は社内で広がりつつある。その真ん中にIT部門がいるのは、10年以上にわたる部門変革のたまものだ。