ソニーは社名を変更し、各事業のシナジーを引き出す「One Sony」に挑む。デジタル変革の実現に向けてCIO(最高情報責任者)の役割は重要性を増す。システム内製にかじを切り、クラウド技術などの知見の蓄積を図る。
2021年4月、社名をソニーグループに変更し、祖業のエレクトロニクス事業を手掛ける中間持ち株会社が「ソニー」の名前を引き継いだ。同じタイミングで新たな中期経営計画も始まった。「One Sony」という方針の下、売り切りからリカーリング(継続課金)型ビジネスへの転換を加速し、事業をまたいだシナジーを引き出していく。
グループ共通のデータ基盤構築
その基盤となる取り組みが、グループ横断のデータ利活用プラットフォームである「Sony Data Ocean(SDO)」の構築だ。第1弾は2021年度早々に完成する。その後も継続的に進化させていく。各事業が持つデータを一元的に収集・分析できるようにして、新しい顧客体験やサービスを開発する狙いがある。ソニーグループのDX(デジタルトランスフォーメーション)のど真ん中の取り組みといえる。
既に米国や日本でSDOを実験的に使い始めている。米国ではエンターテインメント事業を中心に、音楽事業が持つミュージシャンのファン層と、ゲーム機のプレイステーション(PS)の顧客層を組み合わせて分析し、共同プロモーションを展開するといった取り組みを進めている。
日本では主にエレクトロニクス事業で活用している。カメラやPSの利用状況を分析し、スマートフォンXperiaの改善に役立てている。例えば、PSのユーザーの使い方を分析し、ゲームアプリ利用時におけるXperiaのバッテリー制御に生かすという具合だ。
SDOは各事業部門だけでなく、外部事業者などが提供するデータを一元管理し、それらを分析するアプリケーションを備えている。外部のデータをSDO向けに一括して購入することでコストも下げられる。
SDOを使いこなすデータサイエンティストの育成にも取り組む。ソニーコンピュータサイエンス研究所と共同で「データサイエンスラボ」を設置し、データ分析の基礎から応用まで社内研修プログラムを提供している。R&D(研究開発)部門と連携し、AI(人工知能)活用も推進する。GPU(画像処理半導体)サーバーを設置したデータセンターを2020年度に稼働させた。今後、順次拡張していく計画だ。