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「リアーキテクト」と「リビルド」推進

 アーキテクチャ戦略では、こうしたクラウドへの移行も含めて、グループ企業全体のシステムのアーキテクチャーを見直す。一丁目一番地と位置付けるのが、勘定系システムの変革だ。勘定系という土台がしっかりしていないと、顧客へのサービス提供はおぼつかない。その安定性は金融機関の根幹であり、軽視することはできない。

 戦略の方向性は2つある。1つが、勘定系などの業務アプリケーションをアーキテクチャーレベルで見直す「リアーキテクト」だ。預金など大量のトランザクションを短時間で処理しながら、同時に高い信頼性が求められるアプリケーションが対象となる。ここはメインフレームに残すが、一部の機能を整理・統合することは考えられる。

 もう1つがアプリケーションを再構築する「リビルド」だ。融資や外国為替などの領域を想定しており、再構築に合わせてシステム基盤をメインフレームからオープン系サーバーやクラウドに移していく。

 現時点では、必ずしもクラウドがシステム基盤のベストソリューションであるとは考えていない。柔軟性が求められるシステムで、コストメリットが得られるものはクラウドにどんどん出していくが、メインフレームの高可用性が生かせる業務は今後も残る。足元でメインフレームがなくなるようなことはあまり考えていない。

 アーキテクチャ戦略はシステムの改革にとどまらない。システム刷新などのタイミングを捉えて、業務プロセスも見直す。使われなくなった機能などの「ぜい肉」をそぎ落とし、なるべくシンプルにしていく。特に店舗業務は特殊なロジックがたくさん組み込まれているので、ここをどこまで標準化できるかが鍵を握る。

 戦略の推進に向けてプロジェクトチームの下に複数のワーキンググループを立ち上げており、月次や週次で情報共有しながら活動している。我々やシステム開発などを手掛ける三菱UFJインフォメーションテクノロジー(MUIT)だけでなく、IBMや日立製作所など主要なITベンダーにも参画してもらっている。

 MUITは銀行システムを開発・運用するための「本丸」だ。今まで以上に業務部門とコミュニケーションを取りながら、場合によっては自分の持ち場以外にも「領空侵犯」してプロジェクトを進めるマインドが必要になる。そのためにも、銀行とMUITなどとの人材交流を増やしたい。

ニコスは1000億円規模で片寄せ

 2022年4月にグループCIO(最高情報責任者)に就く前は、三菱UFJニコスの常務執行役員として、難航するシステム刷新プロジェクトの立て直しに取り組んだ。

 新システムを構築するのは難度が高かったため計画を見直した。具体的には、比較的新しくシンプルだったMUFGカードのシステムに、DCカードとニコスカードのシステムを順次片寄せすることにした。完了時期は2030年ごろを想定しており、投資額は1000億円規模になる見込みだ。

 計画の見直しに当たっては、基幹システムの刷新を最優先課題と位置付けた。システムの片寄せは一定程度、要件を犠牲にせざるを得ないため、顧客と接する従業員はつらい思いをする。歯を食いしばって取り組むことで、一枚岩でやれる雰囲気ができてきた。トップマネジメントはもちろん、業務部門も腹をくくってくれた。