長年、佐川急便の物流を支えるIT部門の実力アップに心血を注いできた。非効率な仕事の進め方に人手不足が重なり、悲鳴を上げる多くの物流現場。そんな危機的状況を脱すべく、デジタル技術を活用した業務改革に挑む。
佐川急便を含むSGホールディングス(SGHD)グループの情報システム改革に携わって15年余りが過ぎた。初めの10年間はフューチャーアーキテクトのITコンサルタントとして基幹系システムの刷新やデータ分析基盤の整備などに注力した。2016年からシステム子会社SGシステムの社長を務めており、2019年にはSGHDの執行役員と宅配子会社の佐川急便の取締役に就任した。
この間、システム刷新などを通じてデジタル変革に向けた足場は固めてある。今まさにグループ全体のIT戦略を統括する立場となり、いよいよ経営に資するIT、攻めのITの実現に向け本格的に取り組んでいるところだ。
目下の経営課題は複雑で深刻だ。例えば、ネット通販の普及に伴って宅配を中心に小口の荷物が増え、配送頻度が高まっている。配送現場では搬送や積み下ろしなどの作業負担も増す一方だ。慢性的な配送ドライバー不足も相まって、物流現場では人手がひっ迫した状況にあるのに、非効率な仕事の進め方が各所に残る。日本の人口減少はこれから急速に進む。今後も成長を持続するには、デジタル技術による業務の抜本的な省力化や効率化に、今から取り組んでおく必要がある。
実際に様々な手を打ってきた。SGシステムで腕利きのエンジニア10人を集めて「高速開発チーム」を組織したのも、その1つだ。普段から佐川急便の営業部門の横に席を設けて、仕事をしてもらっている。配送ドライバーが集配業務で使用するスマートフォンアプリや、ドライバーと営業所の連絡用システムなどについて、現場部門の要望を素早く取り入れながらアジャイル開発に取り組んでいる。