異業種から日野自動車に入り、DXを主導している。ヤマトホールディングスとイオンでIT・物流改革を主導してきたプロのCIOだ。経験を生かし、トラックメーカーの立場から物流危機を救うべく奮闘する。
ヤマトホールディングスとイオンでCIO(最高情報責任者)として仕事をしてきたが、2020年に日野自動車へ移った。私の一貫した思いは、ITの力で日本の物流危機を救いたいということ。物流の現場は人手不足が深刻だ。社会全体を揺るがす大問題だというのは、内部にいれば容易に分かる。いろいろと努力したが、物流の一翼を担うだけのヤマトや小売業のイオンで取り組めることには限界があった。
例えば、「食料品1000個を積んだトラックが物流センターに10時に着荷予定」なら、遅刻はもちろん早着も許されない。早めに着いた場合、周辺で待機する。1回の着荷におおむね1時間かかるとすれば、そのうち待機に20分程度、荷下ろし作業に20分、荷物の内容確認に20分かかる。荷下ろし作業以外の40分は無駄で、この非効率が人手不足を助長している。
だが荷受け側が事前に情報を把握する手段がないので、現物を定時に待ち受けて内容を確認するしかない。食品などのメーカーや運輸業、卸、小売業とプレーヤーが多すぎて、物流に関わる情報の標準化が進まない。ヤマトもイオンも規模こそ大きいが、全体で見れば1プレーヤーにすぎず、標準化を主導できなかった。
そんな行き詰まりを感じていたときに、日野との縁があった。日野はトラックメーカーの立場から物流業界へのソリューション提供を目指している。そのためのDX(デジタル変革)組織を立ち上げようとしており、私に誘いがあった。
トラック市場はシェアの集中が進んでいる。デジタル分野で協業関係にあるいすゞ自動車と日野を合わせれば、国内シェアの過半を握る。トラックという物流情報の発生源を握っていれば、1プレーヤーではできなかったことができそうだと直感した。