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チューリッヒ保険のCIOは多数の企業を渡り歩いた「プロCIO」だ。新型コロナ禍ではコールセンターのほぼ完全なテレワークを実現した。「CIOシェアリング」の取り組みで、IT担当役員のあり方にも一石を投じる。

木場 武政(きば・たけまさ)氏
木場 武政(きば・たけまさ)氏
1998年に米アメリカン大学卒業。SAPジャパンに開発者として入社。その後、日本オラクルなどを経て、2006年に米AIGに入社し日本と韓国の顧客管理戦略などを統括。日本IBMを経て、2014年にチューリッヒ保険にCIOとして入社。(写真:陶山 勉)
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 私はスイスに本拠を置くチューリッヒ保険の日本における損害保険事業で情報システムを統括している。主力の自動車保険は1年ごとに更新するので、顧客満足度の高さが毎年の業績に直結する。顧客には他社の乗り換えずにできるだけ当社と長いお付き合いをしていただきたい。それをITで支援するのが私の仕事だ。

 顧客満足度は顧客と接する従業員らの満足度と強く連動する。顧客満足度と従業員満足度を高めるための大きな挑戦の1つが、在宅コールセンターの導入プロジェクトだった。2020年4月の新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発令の際に、約850人のオペレーターのうち、郵便物の処理などに伴う出社を除き、95%の在宅勤務率を実現した。

 この規模で在宅コールセンターを実現した事例は同業だけでなく異業種でもあまりないのではないか。業務水準を落とさずに、オペレーターに安心して働いてもらえる仕組みを作れたと自負している。

 実はプロジェクトの発端は新型コロナ禍ではなく2019年に相次いだ大型台風被害だった。交通機関の運休が相次ぎ、オペレーターが拠点に通勤できずに業務が滞るリスクを再認識した。