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資生堂が真のグローバル企業に飛躍するためにDX(デジタル変革)を急ぐ。業務プロセスやデータを標準化し、世界各国の基幹系システムを統一。IT担当者や美容部員らを結集したデジタル子会社も設立し変革を加速する。

高野 篤典(たかの・あつのり)氏
高野 篤典(たかの・あつのり)氏
1992年ノーザンテレコム ジャパン(現ノーテルネットワークス)入社。デル(現デル・テクノロジーズ)などを経て、2019年4月資生堂に入社。2021年1月エグゼクティブオフィサーに就き、同年7月資生堂インタラクティブビューティーの社長を兼任。(写真:木村 輝)
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 資生堂は2019年11月から、グローバルシステム導入によるビジネス改革プロジェクト「FOCUS(First One Connected and Unified Shiseido)」を推進している。その核となるのが、基幹系システムの統一など世界共通のITプラットフォームの構築だ。

 従来はリージョンごとの裁量により、独SAPや米マイクロソフトのERP(統合基幹業務システム)を使ってきた。だが、2019年12月期に売上高1兆1000億円、営業利益率10%を超えた当社は、次の成長を考える必要がある。基幹系システムがばらばらのままでは、グローバル経営を推進する世界の競合企業に肩を並べては戦えない。

 そこでFOCUSでは、SAPのS/4 HANAに統一し、シングルインスタンスの実現、つまりグローバルで単一のシステムを構築することにした。中期経営戦略「WIN2023」の最終年度となる2023年末の完了を目指し、海外での取り組みを先行させている。米国では工場のシステムを除きS/4への移行を終えた。シンガポールでの移行も2021年4月までに済ませた。アジアパシフィック地域の他の7カ国・地域についても、2022年3月までに移行を完了する予定だ。

 難関となるのは日本本社におけるシステム刷新だ。現行のSAPのECC 6.0では大量のアドオンを構築しているが、新システムは業務プロセスの標準化ありきで導入を進める。もちろん移行プロジェクトは一筋縄でいかないと覚悟している。アクセンチュアにプロジェクトへ参画してもらい、同社が持つ消費財メーカーのベストプラクティスのテンプレートを使い、最小限の修正で開発を進める計画だ。

 グローバルでFOCUSを推進するにあたり、旗振り役の「ビジネストランスフォーメーション部」を設置した。私の配下にある部門だけでなく、ビジネス主導となるよう、会計部門や事業部門などの人材も充てた。ステアリングコミッティー(運営委員会)も置いて、毎月開催するWeb会議には各地域の現地法人のCFO(最高財務責任者)らが参加する。状況によりCEO(最高経営責任者)も加わっている。