長期経営ビジョンで「越境人財の育成」を掲げるサッポログループ。2022年からは全社員約4000人を対象にDX(デジタル変革)教育に取り組む。デジタルサービスの創出などに挑戦する社員を支援する体制も整えた。
2022年初めから、サッポロビールをはじめとするグループ全社員約4000人を対象にDX(デジタル変革)人財化に挑んでいる。長期経営ビジョン「SPEED150」では、人材をグループの財産と捉えて「人財」と表現したうえで、「新しい価値と感動を提供できる越境人財の育成」を掲げている。
私はサッポロホールディングスで初のDX・IT統括担当役員に就任したが、人事担当の役員でもある。これまでも社員がキャリアを磨くための公募型研修や、選抜メンバーがスタートアップ企業と組んで新規事業創出を競うビジネスコンテストを実施してきた。
DX人財化の取り組みはこうした人財育成策の一環であり、DXを実現するうえでの「一丁目一番地」とも位置付けている。グループの事業会社でDX案件が増えている一方で、担い手が枯渇している。まさに「新しい価値と感動を提供できる越境人財」を育てなければ企業として生き残れない。
教育プログラムは3ステップからなる。グループ全社員を対象にDX・ITの基礎を理解してもらう「全社員ステップ」、公募を経てDX・IT案件を推進しようという意識と素養のある「DX・IT推進サポーター」を育てるステップ、そして案件を動かせる「DX・IT推進リーダー」を育成するステップだ。
全社員ステップでは、eラーニングで5時間ほどの研修を2022年2~3月に実施した。4月からはDX・IT推進サポーターの育成も始めている。データサイエンスやイノベーションなどについて学んでもらうが、想定の2倍に当たる約600人が応募してくれた。全員に受講してもらっている。
参加者には役員やベトナム法人の社員もいる。年代別では20~30代と40~50代がほぼ半々だった。40~50代の割合が多かったのは意外だった。DXには実務を深く知る人が変革に関わる必要があるので、とてもうれしいことだ。今後は150人規模のDX・IT推進リーダーの育成も進めていく。