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アフラック生命保険が外部企業の力を取り込んだデジタル変革に挑んでいる。まずはセブン銀行や三菱UFJ銀行と提携し、保険金などの即時払いを目指す。アジャイル型の仕事の進め方を全社で導入しており、IT部門が旗を振る。

1984年成城大学卒業、同年4月コンピューターサービス入社。1989年10月以降、アリコジャパンやGEエジソン生命などでシステム部長やCIOを歴任。三井生命保険CIO兼グループIT会社社長を経て、2015年1月アフラック入社、常務執行役員。2018年4月より現職(写真:陶山 勉)
1984年成城大学卒業、同年4月コンピューターサービス入社。1989年10月以降、アリコジャパンやGEエジソン生命などでシステム部長やCIOを歴任。三井生命保険CIO兼グループIT会社社長を経て、2015年1月アフラック入社、常務執行役員。2018年4月より現職(写真:陶山 勉)
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 当社は今、デジタル変革を推進している。他社と組んで新たなサービスを立ち上げるとともに、全社の業務をアジャイル型に変えていこうとしているのだ。アジャイル型とは市場の変化に迅速に対応できるようにすることだ。

 新たなサービスの創出で特に注力するのが、顧客への支払いのスピードアップだ。第1弾として2018年11月に、顧客が銀行口座などを介することなく、セブン銀行のATMで保険料の返金を受けられるサービスを始める。

 契約内容の変更などに伴う保険料の返金ではこれまで銀行口座への振り込みか郵便為替を使っていた。銀行口座の本人確認や為替証書の換金などで顧客に手間をかけるうえ、支払いに時間がかかっていた。新サービスはその手間を省く。顧客のスマートフォンに確認用番号を送り、顧客がATMに入力することで、いつでも手数料無料で現金を受け取れるようにする。

 かねてより、お金の受け取りに時間がかかることが、保険のペインポイント(顧客にとっての困り事)だと認識していた。サービス向上のため、すぐに支払える策はないかとアンテナを張り巡らせていたところ、2017年5月にセブン銀行が口座不要の「現金受取サービス」を始めると発表した。解決策になるとみて、いち早くセブン銀行に「生命保険分野ではまず当社と組んでほしい」と申し入れた。

 IT部員にはセブン銀行の担当者との交渉に当たらせている。実はITにとどまらず、手数料などビジネス面の交渉も担わせている。これからのビジネスにはITが必ず関わってくるからだ。IT部員は新しいビジネスモデルを自ら考え出していかなければならない。それにはITだけでなくビジネスにも精通する必要がある。

 2018年5月に新サービスをいち早く発表すると、生保業界初の試みとして注目を集めた。最新のデジタル技術を持つIT企業から様々な提案をもらえるようになり、新たな試みにもつながっている。

 さらに2018年12月には第2弾として、三菱UFJ銀行のインターネットバンキングサービス「BizSTATION」を活用して、がん保険の給付金を即座に支払うサービスを始める。社内の保険金を支払う業務部門と連携して、保険金の請求内容を素早く査定できるようシステムの刷新を進めている。

異業種のディスラプターに備える

 社内では社長のリーダーシップにより、業務の進め方をウオータフォール型からアジャイル型に変革する取り組みをスタートさせた。2018年7月には、IT部門にアジャイル推進課を設置した。単にシステム開発をアジャイル型に変えるだけでなく、社内の業務部門やイノベーション推進組織などと緊密に連携しながら、アジャイル型で商品開発などのプロジェクトを進めていくのが役割だ。

 1つの保険商品を世に出すのに「計画に1年、開発に数年」が普通だった。まさにウオータフォール型の開発そのもの。これを顧客ニーズの変化に即応して必要な保険や関連サービスを短期間で出せるように改めていく。

 これからは生保業界にも、ITを活用したディスラプター(破壊者)が異業種から参入してくるだろう。イノベーティブな商品を素早く開発できるようになることで、新たな競合とも戦える体制作りを目指す。そのためには、IT部門が率先してアジャイルを実践し広めていかなければならない。そう考えて部内にアジャイル推進組織を設置したわけだ。

PoCではなくプロトタイプを作れ

 アジャイルと言っても手当り次第にトライするわけではない。事業に直接つながらないPoC(概念実証)の実施を禁じている。予算がふんだんにある金融機関は、多額の費用をかけてPoCで開発したものを捨ててしまうこともあると聞く。予算が限られた当社はそのようなPoCの墓場を作る余裕はない。

 IT部員には「事業化を前提にしたプロトタイプを作れ。少ない予算であっても、ビジネスで使えるものを作って見せてみろ」と発破をかけている。IT部員も「やってやろうじゃないか」と意気に感じているようで、積極的に取り組んでもらえている。