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マツモトキヨシホールディングスがデータ活用を強力に推し進めている。データ分析によりヒット商品を独自開発したほか、広告事業に乗り出した。リードするのがCDO(最高デジタル責任者)の立場にある松田崇氏だ。

松田 崇(まつだ・たかし)氏
松田 崇(まつだ・たかし)氏
1996年にマツモトキヨシ(現マツモトキヨシホールディングス)入社。店長などを経て2000年より本部にて商品部、営業企画などを担当。実店舗とオンラインを融合した戦略立案などに携わる。2016年に店舗運営本部運営企画部長。2019年4月より現職。(写真:陶山 勉)
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 当社は2021年3月期の重点戦略の1つに「デジタル化の更なる高度化」を掲げている。このデジタル戦略をリードするのが私の役目だ。

 ドラッグストア業界は市場が伸びているとはいえ、企業間の競争は年々激しさを増している。各社ともマーチャンダイジング(商品政策)に工夫を凝らしているにもかかわらず、9割が同じ商品を販売している。そういった競争環境で「マツキヨ」を選んでもらうにはデジタルを駆使していかに顧客と関係を築くかが重要になる。

データ分析でヒット商品を生む

 当社は全国に1700以上の店舗網を持つ。会員向けスマートフォンアプリは1450万ダウンロードに達し、EC(電子商取引)サイトやLINE公式アカウント、ポイントカードなどを含め延べ7000万の顧客接点を持つ。

 こうした顧客データを一元的に管理するシステムを2015年に構築して以来、自社のマーケティングやプライベートブランド(PB)開発、メーカーのマーケティングの支援などにデータを生かしてきた。オフラインとオンラインで得られたデータを一元管理できる大規模なデジタル基盤を整えているからこそ、データを生かした各種施策が打てていると自負している。

 当社のデータ活用は大きく2つに分けられる。1つは本業である小売業への貢献だ。顧客の嗜好を分析し来店を促すオファーをアプリに表示したり、消費傾向をPBの開発に生かしたりしている。特にPBでは特定ジャンルにおける売れ筋をデータ分析することで、メーカーが販売するナショナルブランド(NB)の売り上げを上回る数多くのヒット商品を生み出している。

 例えばエナジードリンクのPB商品は、カフェインの含有量をトップメーカーの製品の2倍にした。データ分析の結果、エナジードリンクでは顧客のKBF(重要購買決定要因)がカフェインの含有量であることが分かったためだ。実際に商品化すると、NBの売り上げを上回る人気商品になった。他社の店舗にない、特徴のあるPB商品がマツキヨへの来店動機にもつながっている。膨大なデータを持つ我々だからこそできる商品開発だろう。