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三井不動産のIT部門が2020年4月に、DX本部に進化した。オフィスビルや商業施設など多岐にわたる事業でDXを進めている。CIOはDX本部をベンチャーのような組織にすべく人材獲得に力を入れる。

古田 貴(ふるた・たかし)氏
古田 貴(ふるた・たかし)氏
1987年三井不動産入社。新規事業部、ビルディング本部営業部などを経て、2009年情報システム部(当時)に異動。IT人材の採用強化や組織拡大をしながら、全社の事業変革や働き方改革を推進している。2020年より現職。(写真:陶山 勉)
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 当社はオフィスビル、商業施設、住宅、ホテル、物流施設など多岐にわたり事業を展開している。2025年に向けたグループ長期経営方針「VISION 2025」の中で「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」していく方向性を打ち出している。

 その方針に沿ってITやDX(デジタル変革)の取り組みを強化するため、2020年4月にIT部門であるITイノベーション部を再編し、DX本部を新設した。DX本部には、既存業務のプロセス変革や既存システムの先進化を担うDX一部と、新規事業の支援やデータ活用の推進などを手掛けるDX二部を設けた。

事業部門との一体感を高める

 今CIO(最高情報責任者)として挑戦しているのが「全社DX体制」の実現だ。オフィスビルなどの事業部門や、新規事業などを担う組織にDXの主役を担ってもらい、DX本部が支援する。

 現在、商業施設関連ではオムニチャネルの推進や店舗へのRFID(無線自動識別)タグの導入を進めている。AI(人工知能)システムを組み込んだ物流施設の整備、5G(第5世代移動通信システム)のオフィス活用など、同時多発的にDXプロジェクトを進行中だ。

 プロジェクトでは事業部門が企画している段階からDX本部も参画し、企画の実現に役立ちそうなデジタル技術などを提案するようにしている。企画が固まれば、必要なシステムの要件定義や設計、プロジェクトマネジメントなどをDX本部が引き受けている。

 心を砕いているのは、組織の壁ができないように事業部門との一体感を高めることだ。例えばDXプロジェクトに関する報告は、事業部門とDX本部の各部長に対して、事業部門とDX本部の課長が合同で実施するようにしている。事業部門の担当者がDX部門に異動して、DX部門の担当者と一緒にプロジェクトマネジメントを担うといった人材交流にも取り組んでいる。

 もう1つの挑戦は、DX本部をベンチャー企業のような組織にしていくことだ。私がIT部門のグループ長に就任した2009年の段階では、IT部門の人員は不動産事業からのローテーションで来ていた15人程度だったが、DXなど攻めのITにも取り組めるよう自己進化させてきた。2017年以降、外部からIT人材を積極的に採用した結果、今では90人ほどの体制になっている。