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楽天グループは今、技術者に心理学や歴史学などを学ぶことを奨励する。データからより深い知見、インサイト(洞察)を得られる人材を育てるためだ。6000人の技術者を率いる平井康文CIOにデータ活用やクラウド戦略を聞いた。

平井 康文(ひらい・やすふみ)氏
平井 康文(ひらい・やすふみ)氏
九州大学理学部数学科卒後、1983年4月に日本IBM入社。米IBMヴァイスプレジデントを経て、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)専務、シスコシステムズ社長を歴任。2015年2月楽天(現楽天グループ)に入社し副社長兼CIOに就くほか通信事業を統括。2016年7月より現職。(写真:陶山 勉)
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 2015年にCIO(最高情報責任者)に就いてから一貫して、技術をどうビジネスに結び付けるかを職務として担ってきた。現在注力するテーマの1つが、楽天グループが持つデータをビジネス価値に結び付けることだ。そのために単なるデータの分析(アナリティクス)ではなく、データから洞察(インサイト)を得ることに力を入れている。

 楽天は日本の事業全体で1億以上の会員IDを持つ。これまではデータを集積するデータレイクの構築チームと、アルゴリズムの開発チーム、データレイクとアルゴリズムを使って分析するチームによってデータ活用を進めてきた。この3チーム体制を維持しながら、分析チームの役割をインサイトの獲得へと転換しているところだ。

 インサイトを得るために重要なことは、人を主語にしてデータの背景を考察することだ。そのためには統計や数理分析のスキルだけではだめで、心理学や歴史学、経済学なども含めたリベラルアーツの素養が必要になると考えている。データ分析に人文科学の知見も駆使して人を深く洞察できる人材を、私は「データアーティスト」と呼んでいる。分析担当チームの技術者には人文科学も学びデータアーティストを目指すよう促している。文系出身者もチームに参画し活躍している。

 実際に顧客のライフスタイルの変化を洞察する成果も出ている。仮定の例を示すと、女性が楽天市場で男性ものの商品を購入すると、楽天トラベルなど他サービスの利用も変化する顧客層が統計的に現れるといったことがある。商品は交際する男性への贈り物かもしれない。こうした顧客層の好みに合うであろう旅行商品を考察してクーポンを提案するなど、変化の半歩先を行く施策を打てている。

 インサイトを重視するのには、楽天が持つ複数サービスのクロスユースを拡大する狙いもある。顧客の嗜好に加えて、本人さえ気付いていない未知の嗜好に合った提案も可能になると考える。