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約700億円とされる金額を投じ製鉄所の基幹システム統合を進めるJFEスチールは、その前哨戦として1日100万件を処理する巨大なDBをオープン化した。脱メインフレームに向け「鉄の意志」で臨み、様々な課題を乗り越えた。

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 JFEスチールが全国にある製鉄所の基幹業務システムの全面刷新を進めている。システムの稼働環境をメインフレームからオープン系システムへと移行。製鉄所ごとに分かれている製造プロセスを統合するなどアプリケーションも再構築する。投資額は総額600億~700億円とされ、2016年から足掛け6~7年におよぶとみられる長期プロジェクトである。現在は専門組織である「製鉄所業務プロセス改革班」を中心に、2019年3月に完了予定の第1期に取り組んでいる。

 第1期の完了に先立ち、全社のサプライチェーン管理(SCM)の中核であるメインフレーム上のデータベース(DB)をオープン系のサーバーに移行する、いわば前哨戦プロジェクトを2017年に完遂した。JFEスチールは前哨戦の経験と成果を第1期、第2期と続く全面刷新プロジェクトにつなげる考えだ。

 JFEスチールが基幹業務システムをオープン系に全面移行する方針を固めたのは2015年のことだ。その一環で5カ所の製鉄所が個別に持つシステムを全面再構築して製造業務プロセスや設備の体系を全社で統一。各種のDBも統合する。

(左)東日本製鉄所(千葉地区)の熱延工程、(右)東日本製鉄所(千葉地区)の全景(写真提供:JFEスチール)
(左)東日本製鉄所(千葉地区)の熱延工程、(右)東日本製鉄所(千葉地区)の全景(写真提供:JFEスチール)
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レガシーアプリが2億ステップ

 既にオープン系のシステムも一部で利用しているが、製鉄所を中心にメインフレーム上のレガシーアプリが合計2億ステップほど残っていた。「このままではIoT(インターネット・オブ・シングズ)やビッグデータなど最新のITを十分に活用できないと危機感を持った」。IT改革推進部の新田哲部長はオープン系への移行を決めた理由についてこう話す。

 メインフレームの開発経験を持つ人材が減っているなど、新規開発や機能拡張が今後は難しくなるとの見通しがあった。運用コストを下げにくいという課題も抱えていた。「変化に強い柔軟な情報システムを目指すため、オープン系への移行を決めた」(同)。

 川崎製鉄と日本鋼管が経営統合して2003年に発足したJFEスチールは、2000万ステップにおよぶ本社系基幹業務システムの全面再構築という巨大プロジェクトを2006年に完遂した。製鉄所の基幹業務システム再構築はそれを上回る規模になることが確実だ。

 同社は全面刷新プロジェクトに着手するにあたって、メインフレームからオープン系に移行する経験を積んでおこうと考えた。前哨戦に選んだのが「統合現品データベース」だ。東日本製鉄所の千葉地区と京浜地区、西日本製鉄所の倉敷地区と福山地区、そして知多製造所と国内5拠点のシステムが個別に持っていた製造進捗情報をリアルタイムで1カ所に集約するSCM用のデータベースである。約8年間をかけて米IBMのメインフレーム向けDB管理ソフトDB2を使って構築し、2013年に稼働させていた。

 統合現品DBは製鉄所における作業工程の内容、投入した原材料の種類や数量、着手と完了の日時など、「現品」の動きをリアルタイムに記録する。「サプライチェーンの効率化や顧客サービスの向上、社内業務の効率化などに不可欠なシステムだ」(新田部長)。

 統合現品DBは1日当たりのトランザクションが約100万件に達する。前哨戦とはいえ規模は決して小さくない。年間のレコード数は約3億5000万件と多い。さらに24時間365日の安定稼働が求められる。ただアプリケーションに手を入れる必要はないため、全面刷新に向けた挑戦として最適だと考えた。稼働環境の移行に専念することで、信頼性が高いシステムをオープン系で構築する経験を積めるとの目算があった。

図 JFEスチールがオープン系に移行したデータベースの概要
図 JFEスチールがオープン系に移行したデータベースの概要
全社のサプライチェーン管理の基盤を構築(写真:JFEスチール)
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