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日立造船がごみ焼却発電施設でAIの活用を進めている。発電用タービンに供給する過熱蒸気の温度を安定させる。建設・運営する施設でクリーンエネルギー技術として導入を広げる。

大阪市の日立造船本社(写真提供:日立造船)
大阪市の日立造船本社(写真提供:日立造船)
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 ごみ焼却発電施設や水処理プラントといったプラント建設・運営などを手がける日立造船が、ごみ焼却発電施設での人工知能(AI)活用を進めている。神奈川県の秦野市伊勢原市環境衛生組合から委託を受けて同社が運営するはだのクリーンセンター(神奈川県秦野市)で、発電効率向上に欠かせない蒸気の温度の安定化に取り組み、90日間の長期運転に成功した。ごみ焼却施設の運営改善に役立つ技術として、同社が建設・運用する施設での活用を目指す。

AI制御システムを使った試験運転に成功したはだのクリーンセンター(写真提供:日立造船)
AI制御システムを使った試験運転に成功したはだのクリーンセンター(写真提供:日立造船)
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図 日立造船のAIを使ったごみ焼却発電能力向上の取り組み
図 日立造船のAIを使ったごみ焼却発電能力向上の取り組み
2022年にAI制御による90日間の試験運転を成功
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 ごみ焼却発電施設は、一般家庭などから集めたごみを焼却炉で燃やして高温の燃焼ガスを発生させ、そのガスの熱を過熱器内の蒸気によって回収し、蒸気がタービンを回すことで発電する仕組みだ。はだのクリーンセンターではセ氏850~1100度ほどの燃焼ガスをボイラーで回収してセ氏500~600度まで下げ、過熱器内のパイプを通る蒸気を熱する。セ氏250~280度だった蒸気の温度は過熱器を通るとセ氏400度ほどに高まるという。

 セ氏400度という蒸気の温度は、はだのクリーンセンターで用いる発電用タービンの定格値だ。蒸気温度が基準値を超えた場合は時間を記録する必要があり、設備の長寿命化や保守・メンテナンスの効率化にはセ氏400度を超えない運用が求められる。

 一方で定格値はタービンの能力を最大限引き出せる値でもある。より効率的に発電するため、日立造船は日立ハイテクソリューションズと組んで蒸気温度を可能な限り定格値付近に保つAI制御システムを開発した。

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