日本郵便の郵便局向けシステム基盤刷新が2020年1月までに一段落した。社内全体の「ベンダー丸投げ」体質を、新CIOが一変させた。保守費などを見直し、郵便局共通の「局システム」のコストを80%削減した。
「IT部門や郵便局の現場に、ITを外部に丸投げする体質が染み付いていた。自社の責任でITを作って運用する体制に改める必要があった」
日本郵便の鈴木義伯専務執行役員CIO(最高情報責任者)はこう話す。鈴木CIOはNTTデータを経て、2006年に東京証券取引所にCIOとして入社。たび重なるシステム障害で揺れていた同社の取引システム刷新を主導するなど約10年間務めた後、2017年4月に日本郵便に入社した。入るやいなや丸投げ体質脱却を目指しITインフラの調達プロセス改革を断行。2020年1月までに一段落した。
日本郵便の情報システムは2つに大別される。郵便局の店頭業務を支える「局システム」と、郵便事業の荷物追跡などを担う「事業システム」だ。両システムのハードウエアはデータセンターに収容し、郵便局のパソコンや携帯端末からアクセスして利用する。全国約2万4000局の郵便局に配備する「事務員用パソコン」は約13万台に及ぶ。
鈴木CIOはまず、「2020基盤」と名付けたプロジェクトを立ち上げ、局システムのITインフラ全面刷新を進めた。2018年ごろに構想を始め、予定通り2020年1月に全面稼働。4月中旬時点で大きなトラブルは生じていない。
局システムは郵便だけでなく、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の業務も支えるインフラだが、従来の局システムは老朽化が進んでいた。刷新により徹底したコスト削減をしつつ性能・品質を向上させることを狙った。初期投資と今後5年間の運用費の合計は約35億円になる見通し。従来に比べて80%ものコスト削減を実現した。