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新旧の帳票比較も効率化

 一方、人事などのアプリの移行では、多くの帳票を出力することもあり帳票の移行に重点を置いた。データの文字コードはEBCDICから全角文字に関する制御コードがないSJISへ変換した。

 その際、プログラムの整合性を維持するため、制御コードを省いた箇所を半角スペースで補完した。しかし、そのままでは補完した半角スペース分、帳票の印字位置がずれる。そこで移行後のシステムでは半角スペースを削除するソフト部品を2種類用意し、帳票ごとにどちらかを適用していった。

 さらに部品を適用して印字した帳票を、移行前のホストシステムで出力した印字済みの帳票と比較。ここで差異があると色付けしてすぐに分かるようにするツールを導入し、印字位置のずれを確認しやすくした。「移行対象の帳票が5600種類もあり、それぞれの帳票を目視確認するのは難しかった」(市川主任部員)からだ。

1万以上のDBを差異なく移行

 市川主任部員は、「最も頭を悩ませたのが、販生流系だけで1万個以上あるデータベースの移行だった」とプロジェクトを振り返る。中には、1日100万件以上のレコードを製造拠点から受け付けるシステムもあった。こうしたシステムで市川主任部員は、「移行の前と後のシステムでデータにつなぎ目(差異)がないよう切り替えていくのが一番大変だった」と振り返る。

 具体的には、数週間前から従来システムと新システムのデータベース同士を連携させてデータを同期した。移行日は、運用を停止した従来システムと新システムのデータベースが一致しているかを確認。そのうえで停止中に受け付けたデータを新システムのデータベースに反映し、最新の状態にしてから新システムを本稼働させた。

技術者のスキル転換に成功

 プロジェクトでは移行作業と並行して、170人ほどいるJFEシステムズの技術者のスキルをホスト系からオープン系に転換する取り組みも進めた。

 オープン系の言語や技術に関する座学を30回ほど実施した他、各技術者がOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や、ジョブの異常終了を想定したリカバリーの訓練などにも取り組んだ。

図 マイグレーションのプロジェクトにおける特徴的な取り組みの例
図 マイグレーションのプロジェクトにおける特徴的な取り組みの例
ツールやスキル転換で工夫を凝らす(テスト作業の効率化の図は、JFEスチールの資料を基に作成)
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 JFEスチールは現在、製鉄所の生産管理などホストシステムのオープン環境への移行プロジェクトを進めている。「本社基幹システムよりも古く、24時間365日、稼働させている。今回確立したマイグレーション手法を活用してリスクを低減しながらしっかりと移行していきたい」と新田専務執行役員は意気込みを語る。