日本生命保険は3月末、全国の営業職員などに6万台のタブレットを導入した。同時に、使い勝手を追求して業務アプリを開発した。営業活動の効率化やミス削減、訪問件数の増加を狙う。
朝の出勤前、日本生命保険の営業職員(保険外交員)がタブレットを手にして、業務アプリを起動する。画面には地図が表示され、顧客の自宅や勤務先の場所がフラグ(旗)で示される。
「今日の訪問はまずこのお客さまからだ。そのあとで、すぐ近くのお客さまを訪問しよう。晴れているし、自転車で回るほうが早いかな」。あらかじめ作った訪問スケジュールを基に、顧客1人ひとりの居場所と、営業職員の自宅からの経路、所要時間を改めて確認。自転車のペダルを勢いよく踏んで、客先に向かった――。
日本生命の営業職員がタブレットを使って客先訪問するときのイメージだ。同社は2019年3月末、営業職員向けの端末をノートPCから富士通のWindowsタブレットに切り替え、業務アプリも刷新した。タブレットには「TASKALL(タスカル)」という名称を付けている。
導入した端末数は6万台。アプリ開発を含む総費用は630億円に上る。
刷新の目的は営業職員の生産性向上にある。営業活動の効率化やミス削減により、既に訪問件数が増加するという効果が出ている。
同社は営業職員のタブレットを「顧客サービスの生命線」と位置付けている。「タブレットと業務アプリの出来が、顧客サービスの品質を左右する。業務アプリの使い勝手の問題から、ミスが頻発したり、タブレットが使われなくなったりする事態は許されない」と日本生命の練尾諭IT統括部IT統括課長は話す。
営業職員向けの業務アプリに求められる使い勝手のレベルは高い。20歳代から90歳代まで幅広い年齢層の営業職員がいるからだ。
そこで、業務アプリの開発では何より使い勝手の向上に努めた。代表例が、地図情報機能とOCR(光学的文字認識)機能である。
冒頭に示した営業職員のタブレット活用イメージは、地図情報機能によるものだ。ゼンリンの住宅地図ネット配信サービス「ZNET TOWN」、ナビタイムジャパンの経路検索サービス「NAVITIME API」を組み込んで開発した。営業職員の顧客訪問をサポートする。