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収入印紙に年8500万円を支出

 神戸市が民間と交わす契約は年間約8000件に達する。神戸市は2025年までに8割以上が電子契約に移行すると見込む。2022年7月末時点での電子契約はまだ少数だが、予算執行や契約更改が増える2023年4月からは利用が一気に増えると見る。説明会で民間企業の反応はおおむね好意的という。

 神戸市は全面導入後に市側と契約相手の民間企業側を合わせて年間1億円強のコスト削減効果を見込む。最も削減額が大きいのは民間企業が全額を負担している印紙税だ。神戸市が民間と交わした契約金額は2020年度の実績で約1976億円。地方自治体は免税対象だが民間企業は契約金額に応じて契約書に200円~60万円の印紙を張る必要があり、2020年度は8524万円を費やした。電子契約なら印紙税負担はゼロになる。

 市側は職員の作業負担の軽減が大きいと見る。紙の契約書は電子ファイルから印刷・製本して、「公印」と呼ぶ市長の職務に基づくはんこで捺印する。改変がないよう契約書全体を紙で包み、封じた表紙や書面のページごとにも捺印する。

 市は電子化によって職員の作業時間が年間4120時間減り、人件費の削減効果が1400万円になると試算した。さらに印刷と郵送の経費約200万円も不要になる。

 民間企業の利点はほかにもある。市との契約は落札から5営業日以内に締結する必要があるが、オンライン化によって確認できる期間が長くなり、返送の送料負担もなくなる。民間はインターネット環境で利用でき、テレワークで契約書の確認や署名ができる。

図 神戸市が導入した電子契約システムの概要と導入効果
図 神戸市が導入した電子契約システムの概要と導入効果
官民ともに印鑑や封入、郵送から解放(画面提供:神戸市)
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導入しやすい簡易型の利用認める

 神戸市は2021年2月に電子契約の検討に着手した。契機は新型コロナウイルス感染拡大を受けた国の動きだ。

 総務省は2021年1月29日、地方自治体が利用できる電子契約の制約を緩める制度改正を実施した。従来、地方自治体が利用できる電子契約は地方公共団体情報システム機構(J-LIS)など国が指定した認証局が発行した電子証明書に基づく署名に限られていた。総務省は地方自治法の施行規則を改正し、この制約をなくした。民間で普及し始めた簡易型のサービスの利用を認め、テレワークを推進する狙いだ。

 電子契約には契約者自らが電子証明書を取得する「当事者型」と、サービスベンダーが電子証明書を取得して契約の当事者は証明書が不要な「立会人型」がある。総務省の制度改正により地方自治体は立会人型も利用できる。

 神戸市は久元喜造神戸市長が後押しし業務改革を推進してきた。庁内では行財政局業務改革課や企画調整局デジタル戦略部が推進役だ。「すでに庁内文書の多くで電子決裁を導入していた。国の動きによって電子契約も当然のように取り組むべきテーマになった」とデジタル戦略部ICT業務改革担当の山川歩課長は振り返る。

 2021年2月には部署横断のプロジェクトが発足。業務改革課の企画担当とデジタル戦略部に加え、契約に関わる会計室と契約管理室、業務改革課の文書担当が加わった。

 プロジェクト責任者にはデジタル戦略部部長が、推進役であるプロジェクトマネジャー(PM)には業務改革課企画担当の大村恵デジタル化専門官が就いた。大村氏のもとでICT業務改革担当の山川課長らがPMなどを支援した。