KADOKAWAは2020年3月末、グループ社員4500人の在宅勤務を開始。だがテレワーク急増でVPN(仮想私設網)の渋滞が発生した。VPN装置の仮想化や自社クラウドの活用で克服した。
「働き方改革に伴って柔軟な勤務形態が広がれば、それに合わせてテレワーク環境を強化する必要が出てくる。そう考えて、2019年から対策を練っていたことが功を奏した」――。KADOKAWA Connectedの東松裕道Network&Facility課長は、2020年3月末から4月にかけて取り組んだテレワーク環境刷新についてこう語る。
動画共有サイト「ニコニコ動画」などを運営するドワンゴと、出版大手のカドカワが2014年に経営統合して誕生したKADOKAWA。同社では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年3月末までに、全社的な在宅勤務に移行した。グループ全体では最大で4500人が社内業務システムをテレワーク環境から使いながら、自宅であってもオフィスと同じように働き始めた。
直後に浮上したのが「VPN渋滞」の問題だ。テレワーク向けに運用していたVPN(仮想私設網)を多数の社員が一斉に使うことで、業務システムのレスポンスが低下したり、時間帯によっては社内につながらなかったりする事態が生じた。
同社では、テレワーク勤務中にVPNを利用するのが基本だった。社内にあるオンプレミス型の業務システムを使う際だけでなく、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を利用する際も、まず本社にVPNで接続し、そこからインターネットに接続させていた。一方でVPN装置の同時接続数は400人分に限られていたため「毎朝8時ごろからVPNの“利用枠”が埋まってしまう状態だった」と、KADOKAWA Connected の菊本洋司Customer Success部長は当時を振り返る。