神奈川県は新型コロナウイルス対策でデータ統合・分析システムを構築した。国や県の複数のシステムに散在する医療関連データを集約し、分析しやすくした。同システムによって感染状況の予測モデルを開発し、今後の対策に役立てる。
「感染予測のデータに基づき、施策を打てるようになる」――。2021年9月10日、神奈川県の黒岩祐治知事は、神奈川県立保健福祉大学と共同で開発した新型コロナウイルス感染症の感染予測モデルを発表し、こう強調した。予測モデルは、人流データやワクチン接種率などの入力値を基に、将来の感染状況を県内の地域ごとに示す。
今後、県のWebサイトに週次で予測データを公表する計画だ。黒岩知事は「データに基づいてお願いすることで、受け止めるみなさん(の行動)も変わってくるのではないか」と、県民の行動変容につながることを期待する。
開発したモデルは、市町村別の人流データ、ワクチン接種率などを入力することで、二次医療圏(複数の市区町村で構成する医療提供体制の区域)ごとに4週間先までの感染者数を楽観/悲観のシナリオにのっとり予測する。具体的には、「療養者」「入院者」「重症者」のそれぞれの人数推移を、「最悪」「最も起こり得る」「最良」の3パターンで示す。
Google Cloudが2020年11月から提供している感染者予測の人工知能(AI)サービス「Google AI・COVID-19 感染予測(日本版)」と、独自の予測モデルを組み合わせる。1週間先までの予測は独自モデルを使う。市町村別の人流やワクチン接種率などの入力値を用いて、重回帰分析と呼ぶ統計処理によって予測する。8日後以降の予測は、COVID-19 感染予測(日本語版)が提示する変化率を用いて算出する。
開発した予測モデルを使うことで、県内の二次医療圏や市町村ごとに、「人流を何%下げれば、入院者数がどれくらい減る」のように具体的な数字を提示できるようになる。県は、県民に具体的な行動変容を要請できるほか、病床確保など新型コロナ対策の政策立案や判断材料に活用していくとしている。