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AIでノウハウ不足を解消

 製鉄所・製造所では様々な製造ラインがつながっている。高炉で銑鉄を作る「製銑(せいせん)」に始まり、粗鋼を作る「製鋼」、熱を加えて粗鋼を薄く延ばす「熱間圧延」、熱を加えずに延ばす「冷間圧延」、焼きなましをする「焼鈍(しょうどん)」、表面に薄膜をつける「メッキ」といった具合だ。

 そのため1つの製造設備が長時間止まれば、全体に影響が出る。設備によっては1時間止まるだけで数百万円の損害が出る場合もあるという。

 にもかかわらず、JFEスチールでは近年、製造設備の復旧に要する時間が長くなる傾向があった。倉敷の拠点で2015年に発生したある製造ラインにおけるトラブル復旧のケースを事後調査したところ、原因究明の時間が2008年に発生した同様のトラブルに比べ約1.8倍かかっていたという。

 設備故障の原因を迅速に突き止め復旧する。そのために開発したのがAI検索システムだ。同社は「J-mAIster(ジェイ・マイスター)」と呼んでいる。

 J-mAIsterのストレージには故障報告書やメンテナンスマニュアル、日報などの文書ファイルを蓄積している。過去20年分で数十万件に上るという。ここからAIによって、発生中の故障に関連する情報を抜き出す。

 AIは米IBMのAIソフト「IBM Watson」を用いて開発した。原因究明に時間がかかっていた制御機器の故障に範囲を絞り検索することにした。

 製造現場の保全作業員によるシステム操作の流れはこうだ。作業員は設備故障を見つけると、タブレット端末などからJ-mAIsterにアクセスし、故障の発生状況をテキストまたは音声で入力する。するとWatsonが入力内容を解析し、キーワードの候補を表示する。

 例えば粗鋼を一定の形に固める「連続鋳造」のラインで故障が発生し、作業員が「ラインAの連続鋳造装置でモーターが停止した」と入力したとする。この場合、Watsonは「ラインA」「連続鋳造」「モーター」「停止」といったキーワードを提示する。

 保全作業員は該当するキーワードを選ぶ。するとWatsonはキーワードを基にファイルを検索し、関連性が高い順に並べて表示する。

図 IBM Watsonを使って開発したAI検索システム
図 IBM Watsonを使って開発したAI検索システム
AIで関連性の高い過去の故障情報を検索(JFEスチールの資料を基に日経コンピュータ作成)
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