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Watson向けに用語辞書を作成

 J-mAIsterの開発で腐心したのはWatson向けの辞書作りだったという。2016年秋に実施したPoC(概念実証)では、Watsonが製鉄の専門用語を認識せず、「適切な文書が検索結果に出てこなかった」(桑原智IT改革推進部主任部員)。

 そこで数カ月をかけて、Watson向けの製鉄用語辞書を作った。具体的にはWatsonの機能によってメンテナンスマニュアルなどを品詞に分解し、辞書として登録する単語を1つずつ選んでいった。

 その際、製造拠点ごとの用語の違いにも対応した。前出の「連続鋳造」を例に取ると、拠点によっては「連鋳」や「CC」と呼ぶ。

 そこで同一の意味を持つ用語をグループ化した類語辞典も作成した。用語の意味を確認するため、各拠点の担当者を集めたリモート会議を数回開いたという。

 2018年9月までに、全6カ所の製造拠点にJ-mAIsterの配置を完了。その後の調査で効果を確認したという。「従来なら復旧に3時間かかっていた設備故障が2.5時間で済んだケースもあった」(假谷晃設備技術部主任部員)。

 恩恵を受けたのは経験の浅い保全作業員だけではない。ベテラン作業員も効果を実感し、故障対応に使うようになったという。

 今後の課題は辞書のメンテナンスだ。制御機器の進歩に伴い、新しい単語が増える。そこで現在は3カ月に1回の頻度で、手作業によって辞書を更新している。「将来的に、登録した文書から新しい単語を見つけて辞書に追加する作業を自動化したい」と桑原主任部員は話す。