ガラス製造大手のAGCが人工知能(AI)を使ったQ&Aシステムを導入した。熟練技術者の匠(たくみ)の知見を若手技術者にスムーズに伝えられる。月平均250件の質問をシステムが処理、業務時間の削減にもつながった。
「匠(たくみ)の知識が組織としての知になっていなかった」。AGCの山道弘信フロート技術推進部部長はこう振り返る。AGCはグループ売上高が1兆5180億円(2019年12月期)、自動車用ガラスなどで世界トップレベルのシェアを占めるガラス製造の大手企業だ。そんなトップ企業でも製造現場では熟練技術者、いわゆる匠の知識が属人化し、若手技術者にスムーズに引き継がれないという問題を抱えていた。そのために開発・導入したのがガラス製造の技術を検索できるQ&Aシステム「匠(たくみ)KIBIT」だ。
匠KIBITは製造現場で技術者が何か分からない点や疑問点にぶつかった際、社内のパソコンからアクセスして利用できる同社専用のWebサービスだ。2017年1月に開発プロジェクトを立ち上げて検討を開始、同年9月からPoC(概念実証)に取り組み2020年4月、本格導入に至った。11月現在まで改良を重ねながら社内で実績を積んできた。