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工作機械大手のDMG森精機が顧客接点のDXを進めている。商社や電話に頼っていた購入前後のサポートをオンラインに移行。購入前の加工精度チェックなども「デジタルツイン」で試せるようにした。

 金属を鋭利なドリルで削って複雑な形に加工する工作機械の世界最大手であるDMG森精機が、顧客接点のDX(デジタル変革)を進めている。

東京都江東区にあるDMG森精機の「東京グローバルヘッドクォータ」
東京都江東区にあるDMG森精機の「東京グローバルヘッドクォータ」
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 2021年2月には、顧客が工作機械を購入する前に金属加工を試してその精度や生産性を確認する「テストカット」をデジタル化した。「デジタルツインテストカット」と呼ぶ取り組みで、工作機械のシミュレーター(デジタルツイン)で加工を試せるようにした。

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 従来のテストカットには、DMG森精機のショールームにある実機を使っていた。それに対してデジタルツインテストカットでは、工作機械のドリル(工具)や金属の加工素材(ワーク)、ワークを固定したり回転させたりする治具に加えて、工作機械本体の物理特性もシミュレーター上で精密に再現。顧客はワークを工作機械に入れて切削加工する工程や、様々な加工条件の組み合わせなどを試せる。工具の振動など工作機械の物理特性も再現されているため、仕上がりの品質などを実機で加工した時と同じように確認できるとする。

 従来のテストカットは実機を使用するため、実機の空き状況のほか、素材や工具の調達期間などを考慮して作業期間を検討する必要があった。シミュレーターではいつでもテストカットができるため、顧客がテストカットを依頼してから完了するまでの期間を大幅に短縮できるようになった。ワーク1個当たりの加工時間が10分の工程なら2営業日で、1時間の加工なら3営業日、10時間以上の加工なら5営業日でテストカットが完了する。

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 デジタルツインテストカットは、DMG森精機が2016年から進める顧客接点DXの一例だ。購入前の接点だけでなく、購入後の接点についても変革を進めている。同社の工作機械販売は商社経由が多く、これまでは顧客とダイレクトに接する機会は少なかった。

 この状況を変えたのが、工作機械の世界で始まった数十年に1度の大転換、3軸加工機から5軸加工機への移行だった。