全3876文字

社長直々の指示で導入

 ノジマが電子棚札の導入へ動き始めたのは2017年1月だった。

 当時の小売り業界は、一部の家電量販店が電子的に値段を表示する機器を試験導入したり、スーパーなど小売店チェーンが導入したりしていた。ところが液晶表示の電卓に似た電子機器として目立ちやすいためか盗難被害に遭いやすく、初期コストの高さもあって本格導入を断念する企業が相次いでいた。結果として日本の小売り業界は欧米と比較して電子棚札の導入が遅れていた。

 そうした中でノジマが電子棚札を全店舗に導入すると決断したのは、店舗の将来にわたって利点があると考えたからだ。

 国内の家電販売は価格競争による商品の値動きが激しい。当時ノジマは冷蔵庫やテレビ、エアコンといった高価格の大型家電製品の一部について、値段を毎週見直していた。見直しの基準は市況の変化やメーカーとの商談、競合店舗の価格調査などである。だが値段を見直すたびに店舗内の値札の張り替える必要があり、時間やコストがかかっていた。

 勢いを増すインターネット販売と差異化する要素として、ノジマは「きめ細かな接客」(貞森グループ長)を重視している。値札を張り替える作業を削減できれば、その分の時間を接客や人材育成にあてられる。

 そこでノジマの野島廣司社長が2017年元旦に電子棚札の導入を指示。貞森グループ長がプロジェクトリーダーとなった。

 プロジェクトチームはまず導入候補となる電子棚札の製品を探したが、製品選びは難航した。当時の電子棚札の多くは「表現力に欠けていた」(貞森グループ長)ためだ。白黒表示の電子ペーパーや液晶で値段を表示するだけの機能しかなかった。

 候補となる製品が少ないなかでチームが目を付けたのが、パナソニックが展示会で紹介していた製品だった。赤や黒、白の3色が表示可能で、数字だけでなく文字や絵も表示できる。

 パナソニックは電子棚札システムの開発・販売で世界シェアトップであるフランスのセス・イマーゴタグ(SESimagotag)と提携して、電子ペーパーと配信システムを組み合わせたセス・イマーゴタグの製品を国内で販売している。

 ノジマは2017年3月から本社近くの店舗を皮切りに、一部商品を対象に電子棚札の導入を進めた。最初に導入の対象にしたのはSDメモリーカードなどの記録媒体やプリンター用紙など。商品数や型番が多く、店員が型番を判断して値札を張り替える作業に時間がかかるからだ。冷蔵庫など大型家電製品は商品数や値札の枚数が限られるので後回しにした。

図 電子棚札のシステム構成
図 電子棚札のシステム構成
基幹システムやPOSと連動して店舗価格を表示
(図の出所:パナソニックの資料を基に日経コンピュータ作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 導入した棚札はボタン電池で動く幅約5センチメートルのものから、専用電池で動く最大幅17センチメートルのものまで4種類だ。全店舗で計140万枚に上る。大型の電子棚札は小型タブレットとほぼ同じ価格という。

 表示部は電子ペーパーなので見た目は紙の値札と変わりない。「電池で5年間駆動し、この間は人手をかけることなく表示値段を変えられる」(貞森グループ長)。

 電子棚札の表示を変えるには、本社の担当者が従来通り基幹システムに商品の価格データを登録すれば良い。登録した値段データは電子棚札システムのクラウドサーバーから各店舗に送られる。店舗内に複数のアクセスポイントが設置してあり、無線LANを通じて電子棚札に商品ごとの価格データを配信する。

 基幹システムはこれまでPOS(販売時点情報管理)システムにのみつながっていた。電子棚札システムはPOSと同じく基幹システムと連動する仕組みなので、基幹システムのデータを変更すればレジでの価格と電子棚札の値段を同時に変更できる。