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 「日本は2020年の世界最高の国ランキングで3位と健闘。ところが2022年のクラウド利用では米国から7年以上遅れる最下位ランクで、クラウド抵抗国のレッテルを貼られた。このままではクラウド・ネーティブ・アプリケーションへの移行が危うくなる」

表 米国と世界各国におけるパブリッククラウドの普及の時間差
日本は中韓に先行許す(出所:米ガートナー資料を基に作成)
表 米国と世界各国におけるパブリッククラウドの普及の時間差
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 年明けにこうぼやいたのは「クラウド図鑑」をブログで発信しているクラウディットの中井雅也代表である。

 「世界最高の国」ランキングは米誌ニュース&ワールド・リポートが文化的影響力や生活の質、市民の権利、ビジネスの開放度など9項目について調査したもの。日本はスイス、カナダに次いで3位、米国は7位だった。

 一方、「パブリッククラウドへの支出率からみた2022年の世界国別ランキング」は米ガートナーのマーケットトレンド誌ガートナー・スマートに2019年8月に掲載され、日本では12月末に紹介された。2022年度のIT総支出額(通信サービスを含む)を予測し、そこに占めるパブリッククラウドへの支出額から「クラウド支出率」を算出。クラウド先進国の米国に2022年時点で何年遅れているかで「追跡国」「遅滞国」「抵抗国」に区分した。

 ガートナーは2022年の米国のクラウド支出率を14.0%と予測。米国を1~3年の遅れで追う「追跡国」は6カ国ある。日本の2022年クラウド支出率は4.4%で、米国に7年以上遅れる「抵抗国」に位置付ける。

原因はやはりSIerへの丸投げ

 米国から約10ポイント引き離される理由をガートナーは「日本にはクラウドに対する偏見、立法や規制上の障害などがあり企業の採用を難しくしている」とした。世界最高の国ランキングでは「ビジネス開放度」への評価で高得点を得た日本だがことパブリッククラウドに関して開放感は乏しい。

 ガートナージャパンのディスティングイッシュト・バイスプレジデントの亦賀忠明アナリストはユーザー企業の姿勢を問題にする。「クラウド・ネーティブ・アプリケーション時代の肝は迅速性。ユーザーはクラウドを自ら運転しなければならないが、クラウドについてもシステムインテグレーター(SIer)への丸投げが驚くほど多い」。

 クラウディットの中井代表もクラウドの普及が遅れる理由として「日本特有のSIerというブラックボックスの存在」を挙げた。「大手SIerの仕事の大半は受託開発とその後の運用代行であり、クラウド移行に対するモチベーションはない」。

 日本のIT利用はこれまで業務効率化やコスト削減が中心で、ユーザー企業のIT技術者層の薄さをSIerが補ってきた。しかし時代は変わった。「ITはビジネスを動かす原動力となりつつある。ビジネスを可能にする単なるプラットフォームではない」(ガートナー)。「2019年の全世界のビジネス売上高188兆ドル(約2京円)の43%にITが関与した」(米IDC)という指摘もある。

 ビジネスを知り、ビジネスを創るユーザー企業が中心になってITを駆使できる体制に変える。その鍵は内部のIT技術者層を厚くし、ビジネス部門との関係を深めること。だが「層を厚くするには少なくとも5年かかる」(亦賀アナリスト)という。

北川 賢一(きたがわ・けんいち)
北川 賢一(きたがわ・けんいち) 新聞社・出版社を経て、1983年から日経コンピュータ記者。日経ウォッチャーIBM版と日経情報ストラテジーの2誌を創刊し、編集長を務める。現在は日経クロステック兼日経コンピュータ編集