全1193文字

 シリコンバレーを代表する優良企業だった旧ヒューレット・パッカード(HP)にとって、この20年は長く奇妙な旅だった。過去の4人の最高経営責任者(CEO)が同社をリフォームあるいは取り壊してきたからだ。

 旅路を振り返ろう。英プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のコンサルティング部門の買収に失敗したカーリー・フィオリーナ氏は米コンパックを約250億ドルで買収すると2001年に発表した。UNIXサーバーを大手顧客に売ってきた旧HPは、量販サーバーとパソコンを品ぞろえに加えた。

 2002年に米IBMがPwCのコンサルティング部門を買収。それに刺激されたのか、2005年から登板したマーク・ハード氏は139億ドルを費やし、ITサービス最大手の米エレクトロニック・データ・システムズ(EDS)を買収。売上高でIBMを抜いたがハード氏は不祥事と情報漏洩の疑惑で辞任した。

 次のレオ・アポテカー氏は欧州SAPでCEOを務めたためかソフトウエア事業の強化を打ち出し、英オートノミーを2011年に110億ドルで買収。並行してパソコン事業の分離を計画した。だが高い買収金額とパソコン分離が批判され在任11カ月で更迭された。

 2011年9月に着任したメグ・ホイットマン氏は当初、パソコン分社を否定していたが2015年、旧HPを2分割し、自身はヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のCEOに就任。パソコンやプリンターは新HPが引き継いだ。HPEは2017年に旧EDSやソフト事業を手放し、パブリッククラウドから撤退。米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などメガクラウドに対する量販サーバーの販売も中止した。

 ホイットマン氏は在任最後の年に新たな方向性としてGreenLakeと呼ぶサービスを発表した。サーバーなどITインフラを従量課金によって提供する。機器は顧客側に設置するが顧客はクラウドのように利用できる。

 2018年に就任した現任のアントニオ・ネリCEOは、2022年までにHPEの全製品をGreenLakeサービスとして提供する方針を2019年後半に打ち出した。米マイクロソフトでMicrosoft Azureに携わってきたケイス・ホワイト氏をGreenLake責任者に任命。ホワイト氏は「ワークロードの7割は顧客側にある。ここにクラウドの利点を提供することが重要」と説明する。

 さらに米SGIに続き米クレイというスーパーコンピューターメーカー2社を合計16億ドルで買収。米エクイニクスなどデータセンター大手2社と提携し、スーパーコンピューターを貸し出している。

 支払い据え置きや中古機販売などで顧客のITインフラ整備を資金面から支援する金融サービスにも力を入れる。HPEの2020年度の金融サービス収入は24%増え、収入の規模はIBMの同事業に比べて、3倍になっている。

図 米HPEのセグメント別年間売上高(10月末決算)
図 米HPEのセグメント別年間売上高(10月末決算)
激しく変化した事業ポートフォリオ
[画像のクリックで拡大表示]
北川 賢一(きたがわ・けんいち)
北川 賢一(きたがわ・けんいち) 新聞社・出版社を経て、1983年から日経コンピュータ記者。日経ウォッチャーIBM版と日経情報ストラテジーの2誌を創刊し、編集長を務める。現在は日経クロステック兼日経コンピュータ編集